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トービン税
トービン税にまつわる 10の神話
 
トー ビン税にまつわる10の神話

Les dix mythes autour de la taxe Tobin
par Bogdan Vanden Berghe et Daniel Spoel (2002.3.15)
http://www.france.attac.org/a1604


 銀行や金融機関に「安全」だと思ってお金を預けている我々は誰も、そのお金がどんな風に使われているかまるで実情を知らない。だが、確かなことは金融機 関がその預けられたお金で、最大の利益を引出そうと投機に走っていることだ。そして、たとえばタイの人々は、結果的に我々の投資信託ファンドに配当を支払 うために貧困の奈落に突き落とされたのではなかったか?

第1の神話 ― トービン税、それは義足に膏薬か?
 即ち、為替取引に0.1や0.5%の課税をしたところで、焼け石に水 で、金融危機防止には役立たないのではないか。

 こうした批判に応えるために、我々はトービン税の改良型であるスパーン税を検討してきた。ポール=ベルント・スパーン教授が得た結論は明解である。即 ち、二つの目標:投機と闘うことと資金を集めること、この二つの目標のためには二つの手段が必要だということである。こうして二段階課税が編み出され、こ の神話は崩れた。簡単にいえば、通常の為替取引には0.01とか0.02%という非常に低い税率で課税する。この税収は永続的な資金調達に道を拓く。金融 の動きが異常を示したときには、引続く取引に短期的に高率課税をすることで投機抑制をする。こうして市場は再び「落ち着きを取戻し」、パニック(恐慌)と いう事態が避けられる。

第2の神話――トービンはトービン税に反対
 即ち、ジェームズ・トービン自身トービン税に賛成しなくなった。

 この神話は、ドイツの週刊誌「シュピーゲル」に載ったジェームズ・トービン教授のインタヴュー記事による。イタリアのジェノヴァG8サミットの際のデモ をみて、教授はもうひとつの世界を望む(アルテルモンディアリスト, altermondialiste)運動とは距離を置くことにした。しかし、教授はそれほど自分の思索の成果を否定したわけではない。むしろ、教授は投機 にブレーキをかける税の熱心な同調者であり続けた。ただ、教授は徴収された税額にはあまり関心をいだいていない。また、教授は国際金融界の反対派がトービ ン税の政治的反対運動を起こすのではないかと恐れていたのである。

第3の神話――トービン税の科学的埋葬
 即ち、科学的研究によればトービン税は非現実的である。

トービン税が政治的プログラムに登場してからというもの、科学的評価をすべきという要請が新たに広がった。その要請は、フィンランド、フランス、ベルギー そして最近ではヨーロッパ・レベルでもみられた。
幻想を抱いてはならない:これらの研究やそれに基づく声明は、どれもトービン税を否定するニュアンスを帯びている。けれども、これらの研究の結果、トービ ン型の税にバッテンがつけられたというのは神話にすぎない。実際のところ、初めの頃の研究は、ジェームズ・トービンの初期の提案しか検討しておらず、後に なってやっと、より最近の提案が検討されている。しかし、ポール=ベルント・スパーンやロートネイ・シュミットの研究成果については、未だ充分かつ慎重に 検討されていないといわざるをえない。もっと深い研究がなされてもよい。特に、何故トービン型税は実現可能であるはずだという仮定から出発した研究がない のか考えてみようではないか。そうすれば、科学者たちをして、実現方法を模索させたり、あるいは最低でも、偏見を取除くためのスパーンやシュミットの主張 に、耳を傾けさせたりすることができると思われる。今日まで、そのような研究はなされておらず、反対だ、賛成だという同じような議論が続いてきた。しか し、幸いなことに、ドイツの開発協力省の要請で最近行われたポール=ベルント・スパーンの研究は、トービン型税に極めて積極的である。IMFのコンサルタ ントだったスパーンは、こうしてトービンの脈絡のなかで神話を破壊しようとしたのではないだろうか。

第4の神話――トービン税は政治的に不可能である
 即ち、政治はトービン型税を金融市場に強制するほど強力であろうか?

 ジェームズ・トービンは国際金融勢力を目の前にして意見を引っ込めてしまったかもしれない。けれども我々がトービンのように振舞う理由は全くない。
数年前まで、金融投機に反対してトービン税を敢えて唱えたような者は気がふれているとされた。今日、トービン税は政治プログラムに載るようになって、神話 は部分的に突き崩された。ベルギーは欧州議長国であったときに、自ら欧州アジェンダにこの税を組み込んだ。フランスは、トービン税法案に賛成した。ドイツ 政府も検討中であり、ゴードン・ブラウン(英国の現大蔵大臣)はトービン税の詳細な調査を命じた。この傾向はヨーロッパに限ったことではない。コフィ・ア ナン事務総長の発議で国連は新たなる資金調達の道を模索している。トービン税は必ずや検討対象となるであろう。最後に、開発途上国でも重要な国々、即ちブ ラジルやインドも為替取引税の考えを俎上にのせている。さらに世界中で多くの国会議員たちがトービン型税に賛同を表明しているのである。

第5の神話――経済的にトービン税は実施できない
 即ち、多くの可能性や研究成果にも拘わらず、トービン税は未だ何処で も実現していない。またこうした税は金融市場を怯えさせる懸念がある。

 これもまた神話である。過去において、マレーシアやチリがトービン税と似た手法を採用した。金融市場はマイナスの反応を示さなかった。アレルギーも示さ なかった。確かに当初IMFはアレルギー発作を起こしたけれども、これらの国々が資本移動抑制策で危機から脱出するのを見て、むしろ「上手く行ったね」と 彼らを勇気付ける側にまわったのである。

第6の神話――トービン税、それは義足に膏薬か?(続編)
 即ち、トービン税は奇蹟的な解決策ではない。

 これに異議を唱えるつもりはない。しかし、この神話を打ち倒すためにも、我々が望むのは、トービン税をより大きな枠組みの中に位置付けることである。そ れはもちろん、国際金融の構造改革である。IMFは随分前から同じことを言っている。透明性や監査、金融システムの補強が必要である。そこに民間部門を参 加させねばならない。ここで、トービン型税のあまり知られていない利点を明らかにしたいと思う。第一に、全ての為替取引に税を課せば、全ての取引が調査さ れるということである。これにより、IMFが望む透明性が確保される。第二に、スパーン税によってもたらされる保護、即ち投機的平価切下げ圧力が緩和され ることによって、当該国がその準備金を投機対策以外の目的に使うことができるようになるということである。

第7の神話――トービン税は金の玉子を生むニワトリである
 即ち、NGOや「活動家」はトービン税のもたらす収入に関心があるだ けである。

 これは我々の気がかりのほんの一端に過ぎない。トービン税収額が最新の計算によれば500億ドルにのぼり、それが政府開発協力資金(ODA)の年あたり 総額に等しいとしても、これが我々の最大の目的ではない。当然ながら、この資金は開発協力に回るべきである。括弧付きだが、ジェームズ・トービンも国連の 要請になる1994年の論文で同じようなことを提案している。

 我々は、金融投機に反対するという目的をも持っている。90年代の金融危機は世界中で多くの犠牲者を出した。急激な平価切下げは多くの貧困や失業者を生 んだ。更に、攻撃を受けた国々は経済を維持するために一層借金を重ねなければならなかった。こうして1998年、インドネシアは420億ドルもする薬を嚥 下しなければならなかった。全額インドネシア国民が返済するものとして。

第8の神話――トービン税は投機の見分けができない
 即ち、投機的取引とそうでない取引を区別するのは不可能だ。したがっ て投機に闘いを挑むのもまた不可能だ。

 れはなかなか難しい堂堂巡りの神話である。神話の前半部分には理由があるが、後半には理由がない。スパーン型の税では取引が投機的であるか否かを区別す る必要がないからである。通常の取引の場合、全てのひとが極めて低い税を負担する。尋常ではない動きがみえた場合には、一時的に高率税がなお為替取引をつ づけようという投機家にだけ課せられるのである。このスパーン型のエレガントなところは、全てのひとが予め、不測の事態や国外への急激な資本流出が発生し た場合に高税率が適用されるのだと知っていることだ。短期的に利益を獲得したい投機家にとってはその目的を達成することが難しくなる。一方、長期的に活動 する投資家の保護はより厚くなる。0.01%というごく低率の税を払う見返りに、商社や投資家は、今よりずっと安定した金融市場を得られるのである。

第9の神話――金融投機、私には関係ない
 即ち、「金融投機なんて、我々の知ったことじゃない。それは貪欲な巨 大資本家たちがやっていることで、奴らの摩天楼や巨大な金融センターで起こっていることさ」。

 本当にそうだろうか。結局誰が投機行為をしているのだろうか。我々に関係があるのだろうか?
このことは銀行、投資信託、年金基金、保険会社等々に関係している。端的に言って、我々みんながお金を預けている金融機関すべてに関係することだ。それら 金融機関が、我々のささやかな(人によってはそうでもない)預金を使って、融資をしたり、株を買ったり、・・・場合によっては投機をしているのだ。銀行や 金融機関に「安全」だと思ってお金を預けている我々は誰も、そのお金がどんな風に使われているかまるで実情を知らない。だが、確かなことは金融機関がその 預けられたお金で、最大の利益を引出そうと投機に走っていることだ。そして、たとえばタイの人々は、結果的に我々の投資信託ファンドに配当を支払うために 貧困の奈落に突き落とされたのではなかったか?

 我々の補足年金を払うために韓国に数百万の失業者たちが出たのではないか。アルゼンチンにおける社会保障を犠牲にして、金融機関は高い利子を受けている のではないか。金融投機は醜悪にも我々の直ぐ傍にあり、我々は、想像以上にそれに巻き込まれているのだ。

第10の神話 ―複雑で税金をかけられないマーケット
 即ち、金融市場はとても複雑で捉えどころがないので、全ての活動に課 税することは不可能だ。

 これこそ神話そのものである。為替取引に必要なのは、コンピュータと電話線だけである。だからこそ、むしろ絶えずいくつもの人目をごまかす道がありうる のではないか。マーケットが複雑だという神話は本当らしくみえるけれども、これほどインチキなものはない。

 インターネットその他の取り締まりが難しい手段で多額の為替取引が容易に出来るというのに、ではどうしてもっともっと移動の際に横領がないのだろうか。 どうして多額の外貨が消えてしまうことがないのだろうか。どうして取引が無事に決済されているのだろうか。

 それは、誰も他方の当事者が契約を果たさなくなるリスクをとりたくないからだ。取引決済を分散しておこなうシステムではこれはもともと生じないことだ が、反対にシステムはあらゆるリスクを回避するために極めて集中化しているのである。全ての取引がこの中央に集中化したシステムを通過するのだから、トー ビン型の税を徴収するコンピュータを設置するのはとても容易なことである。すべての取引がそこを通過するのだから、誰も避けて通れないというわけである。 タックス・ヘヴン(租税回避地)から来る取引も、タックス・ヘヴンに向かう取引も、である。多額の取引をするものは、手形交換システムを使わざるを得な い。ほぼ全ての取引がもはや現実にトレース(追跡)できるため、この最後の神話も崩されてしまう。しかし、システムを介さず隠密裏におこなわれる、ごく一 部の取引はその限りではない。したがって全ての過剰な投機を完全になくすためには、トービン型税はまだ不充分であるといえる。全ての取引を、どんなに小さ な額の取引でも、名前が出てくるようにする、つまり追跡可能にすることが必要である。

(ボダン・ヴァンデン・ベルゲおよびダニエル・スペル論文より)

2004年7月6日

翻訳:D.Y. TANABE
校訂:長塚 真琴

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