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| トービン税 |
| トービン 税:これまでの論争と活動 |
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トービン税:これまでの論争と活動
トービン税の運動を強力に進めたNGOのひとつが、1998年にフランスで設立されたアタック(ATTAC:市民を支援するために金融取引への課税を求め るアソシエーション)であることはよく知られている。そのアタックは、2000年頃よりニュースレター「サンドインザホイール(SAND IN THE WHEELS)」(週刊)を3ヶ国語で発行し、トービン税に関する小論・記事も多数掲載された。サンドインザホイールは残念ながら2003年10月29日 付け通巻184号を発行で終了した。それまでのトービン税に関する重要な記事を送る。 ●「サンドインザホイール」(週刊)
2002年10月23日号(通巻150)号 ヨーロッパ社会フォーラムでのトービン税をめぐる討論 The Tobin Tax in the European Social Forum of Florence By Bruno Jetin フローレンス(フィレンツェ)で開催されるヨーロッパ社会フォーラムでは、通貨取引税(CTT)をめぐって2つのイベントが計画されている。1つはセミ ナーであり、もう1つはCTTのための条約草案についてのワークショップである。この2つのイベントは独立しているが、もちろん連携することができる A-もう一つのグローバリゼーションのためのグローバルな税金 複数の組織が主催。グローバルな税金は新自由主義の支配を少なくするため、戦争・経済不安・温室効果ガス・環境汚染などに対する国家間の国際プログラムの ため、また途上国の持続的成長のためグローバルな税金は有効な手段である。 セミナーでは新自由主義に対する抑制効果を確認するためヨハネスブルグ・サミットで論議されたグローバルな税金を論議する。トービン税、多国籍企業への包 括税、資本移動への課税、二酸化炭素ガスへの課税、航空税、インターネット税など。 B- グローバル通貨税の条約案のワークショップ ヨーロッパ社会フォーラム 2002年11月6〜10日 通貨取引税(CTT)あるいはトービン税は、グローバリゼーションの危機の中心にある世界金融市場の武装解除を行うのに最も重要な改革であるが、その導入 方法が大切である。同税は三つの主要目的を持つ: 1. 短期資金など為替市場の投機を抑制し、金融市場を安定化させ、各国の金融当局の自治を強める 2.グローバル基金を創設し、補償のシステムや途上国の社会エコロジープログラムを実施する。 3.条約草案は税の主要目的を包括する。2001年10月、カナダでも同様の趣旨の会議がもたれている。 二段階課税を提起したHeikki Patomki が条約草案を準備。Lieven A. Denysはトービン税の効用に関して、ペーパーを用意する。詳細は以下のサイトを参照。 http://www.attac.kaapeli.fi/lib/own/tobin/DraftTreaty/ ポルトアレグレでも示された草案は、税導入は包括的に可能であることを示唆。Spahn モデルを応用して2段階へ課 税方式は改善され、為替変動に対応して過剰投機の余剰利益から徴収、OECD諸国の収益は自動的にグローバル基金に 組み入れられる。通貨取引税機構(CTTO) は、既存のいかなる世界機関よりも民主的に運営され、基金を管理運用す る。30カ国の批准か、少なくとも世界為替市場の取引額の20%に条約が相応するのに応じて条約は発効される。ワークショップはその準備のための公開討論 の場となる。 初のヨーロッパ社会フォーラムであり、少なくとも以下のことを話し合わなければならない: 1.ヨーロッパでCTT導入の技術的可能性 2.この問題でどうすればEUが政治的イニシアチブを発揮するか 3.どのようなCTT組織が税導入を管理するかなど。 4.どのようなプログラムに税収は還元されるべきか ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年9月11日号(通巻144)号 労
組がトービン税を要求
Banking trade unions call for the Tobin Tax UNI(ユニオンネット・インターナショナル) UNI(ユニオン・ネットワーク・インターナショナル)の銀行・保険労働組合世界会議で、フランスCFDT傘下の銀行労働者連合のBernard Dufil書記長が提案したトービン税導入に関する決議が採択された。この会議は43カ国、77の組合が参加した。さあ次はすべての銀行部門労働者の間で この税についての学習と動員を強化することだ。この課題は、UNIが10月12日に呼びかけている世界的なキャンペーンにかかっている。(855語) UNI・金融産業は10月12日を「トービン税アクション・デー」として世界的な行動を呼びかけている。詳しくはUNIのウェブhttp: //www.union-network.org/をご覧下さい(英語) 通
貨取引への国際的課税のための決議
UNI-金融産業 2002年銀行8月、ブラジル・リオデジャネイロにて http://www.union-network.org/unisite/sectors/finance/meetings/rio2002/resolutiontobin-e.pdf 1. 国内経済だけでなく世界経済全体が通貨の投機熱によりがんじがらめとなっている。 2. 2001年4月に国際決済銀行(BIS)によって行われた調査によると、全世界の一日の金融取引量はおよそ12億ドルにも及ぶ。総計3870億ドルが短期 取引である。ほとんどの短期取引は投機的なものである。BISによると、80%の金融取引が7日以内の「アウト・アンド・バック」である。そして40%以 上は2日以内の取引である。それらの目的は各国のわずかな金利差や通貨レートのわずかな変動から利益を上げることである。 3. 巨額の資金が最短時間に最高の収益をねらい世界中を駆け巡っている。しかし、その危険は大きい。 4. 不安定な為替レートは、組合の団体交渉に悪影響を及ぼす。綿密に計算された取り決めは突然の為替変動の落ち込みなどでその国にダメージを与えかねない。 5. メキシコ、アジア、ロシア、そして現在アルゼンチンで起きている金融危機は経済的、社会的崩壊を招く。これらの危機は脆弱な経済から強いところに広がる傾 向がある。それは経済的問題をかかえるこれらの国々が緊密につながっているからである。経済危機は政府や中央銀行が出す迅速な処方箋によって押さえられる かもしれない。しかし、失業につながるような経済を失速させるような方策は経済的、社会的ダメージを引き起こすことになる。 6. ジェームズ・トービンは適切な税の提案をしている。これは瞬間に行われる取引に0.1%の課税をするもので、それによって投機的な取り引きを抑え、そうす ることにより、為替の変動を抑制するものである。このような課税は中央銀行や各国政府の経済金融政策を向上し雇用の創出や技術革新、労働者の訓練に役立つ であろう。そしてまたこの税収を現在の世界的問題、貧困などの対策に利用できるであろう。しかし、基本的には投機的取引きを抑えることが目的であって、歳 入を増やすことではない。 7. 国際的労働組合はトービン税の導入を求めてきた。これですべての問題が解決できるわけではないが、金融市場を安定させる為の一つの手段になりうる。これに よって、安定した成長が期待でき雇用の安定が図られるだろう。 8. UNI-Financeは国際的金融機関や団体の枠組みの中で市場の世界的規制と運営を求めている。その目的は投資をしやすくし長期的な生産を促す為に金 融市場を規制することである。 トー
ビン税がいっそう現実的に
The Tobin tax has just moved a major step closer By David Hillman CLS銀行(外為決済を専門とする銀行)の設立によってトービン税は実現に大きく近づいた。CLSは、外国為替機関がこの膨大な取引に関連するデフォルト (支払不能)のリスクをなくすために、ビジネスの方法を大幅に変更したことを意味する。これまでの為替取引では、2つの支払いが異なるシステム、異なった タイムゾーンで行われてきた。 銀行が取引の安全を大幅に向上するために新しい決済システムを望む一方で、この革新的な支払システムはトービン税を実現可能なものとする。トービン税は理 想的アイデアから現実的なものとなった。 「最初の決済銀行が営業開始-支払停止を回避するため」(9月9日、ロンドン発ロイター通信) 世界初の取り引き決算銀行が金融システムを危機に陥れた9.11から一年たったこの月曜日開始された。・・・ CLSはHerstatt リスクを取り除く目的で始まった。銀行の相次ぐ破綻で未払いの取り引きが重なりアメリカの支払システムを数日止めてしまった。CLSは66からなる巨大銀 行で支えられているが、当初技術的トラブルや運営面での問題も持ちあがった。今週は39銀行で運用が始まる。・・・ 国際金融取引では国内の支払システムに対して独特のリスクを持つこととなる。それは、タイムゾーンの違いから決算に2営業日かかるためである。この期間、 銀行は彼らが決算した通貨で支払う為のリスクがある。CLSはこれらのリスクに対抗する為の中央集権化された初めてのグローバルシステムである。2日かか る決算を5時間で行えるようになる。そして同時にお互いの決算が可能となる。・・・ ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年7月31日号(通巻138)号 持
続可能な発展に関する世界サミット:通商と金融のデッドロック
World Summit on Sustainable Development : deadlock on trade and finance By Celine Tan 持続可能な発展に関する世界サミット(WSSD)は8月26日から9月4日まで、南アフリカ・ヨハネスブルグで開催される。この半年間、実施計画草案を準 備するための会合がニューヨークとバリで開催された。 第4回(最終)準備委員会の結果が示すことは、WSSD では従来からの環境問題のほかに、通商と金融の問題が重要な問題となっているということだ。ヨハネスブルグ・サミットでは、環境保護と自然資源の持続可能 な利用に関する技術的問題よりも、こうした目的を助けるため(あるいは妨げるため)の通商と金融のメカニズムに関心が集まるかも知れない。 バリで行われた交渉が行き詰まったのは、現在のグローバリゼーションのパターンと、それが持続可能な発展に及ぼす影響に関わる問題についての不一致のため だった。米国を先頭とする Juscanz グループ (日、米、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)は、Japan, US, Canada, Australia and New Zealand)、グローバリゼーションと持続可能な発展の関係と、債務、資金の拠出、公正な貿易についての具体的行動について明記した項目を拒否した。 通商と金融に関わっているグループがWSSDのプロセスを監視することが決定的に重要になっている。WSSD の行動計画はWTOのような拘束力は持たないが、すべての国連加盟国の政治的意思と決意を表現するものである。 また、ヨハネスブルグ・サミットにおける「市場ベース」の、「民間セクターによる資金調達」の強調が、世銀やIMFの新自由主義政策の反映であることを注 視する必要がある。「民間と政府のパートナーシップ」への重点の移動は、「先進国」側の責任放棄を示している。 こうして、ヨハネスブルグ・サミットは北側諸国の政治的意志をテストするものとなるだろう。 議長提案のうち、合意に達していない項目の大部分は第4章「グローバル化する世界における持続可能な発展」と第9章「実施手段」の中のパラグラフである。 これらのパラグラフと交渉プロセスの報告を見れば、南北の対立点がわかる。・・・ 77カ国グループ(G77)と中国が提出した提案は、国際的金融体制のシステム上の欠陥を取り上げている。G77は、これらの問題と環境問題の解決と切り 離すべきでないと主張している。Juscanz グループはこの主張に強く反発している。G77は、モンテレー(「開発のための金融」会議)では重要な問題で簡単に妥協しすぎたと考えており、より進歩的 で包括的な行動計画を求めている。ノルウェーは、債務問題とODAについてのG77の提案に最も同調的であり、EUはG77との妥協を追求している。しか し、EUとJuscanzグループの違いを過大評価してはならない。EU諸国はWTOのさまざまな問題をめぐって南の諸国と対立する立場を取ってき た。・・・ WSSDに対する企業の影響力 大企業は、「持続可能な発展のためのビジネス・アクション」(BASD)を通じて、リオ・サミットの際に「持続可能な発展のためのビジネス評議会」 (BCSD)が果たした役割を再現しようとしている。彼らは、WSSD の公式の合意書に彼らの活動を規制するメカニズムを組み込むのを阻止しようとしているだけでなく、水、エネルギー、健康、農業、生物多様性などの重要な分 野で自分たちを有力なパートナーとして押し出そうとしている。また、世界銀行は現在、民間部門および農村の開発戦略を準備中であり、これらの戦略は国家の 役割を小さくし、民間の参加を促すことを目的としている。 「持続可能な発展」という課題が企業の利益によってハイジャックされる危険がある。こうした動きを監視することが重要である。 また、「先進国」が国際的な資金協力よりも2国間のODAを重視することも懸念される。 南北対立が再び前面に バリで開催された準備委員会の過程と結果は、問題がリオ・サミットをめぐって行われた論争に戻ったことを示している。リオで、「発展途上国」は植民地主義 によって負わされた歴史的負債と北側の工業化に伴う資源の収奪について訴えた。・・・10 年が経過して、「南」は当時と同じように「高原闘争」を続けているが、坂は一層険しくなっている。一部の「先進国」(とくに米国)は、リオからの後退を望 んでいる。 貧困軽減、自然保護、環境の持続可能性、経済・社会的発展は、政府に委ねるべきことでもないし、企業のロビイストに委ねるべきことでもない。市民社会の諸 グループが包括的な行動計画のために監視、提言、ロビー活動を行わなければなりません。 (第三世界ネットワーク http://www.twnside.org.sg/) 通
貨取引税(CTT)と発展のための資金
第2回世界社会フォーラムにおけるATTAC・フランスのセミナーの報 告 ブルノー・ジュダン(ATTAC フランス) 2002年2月23日 3日間のセミナー このセミナーは2002年2月1、3、4日に、それぞれ半日ずつ開催され、ラテンアメリカの聴衆にヨーロッパと北アメリカにおける通貨取引税(CTT)、 いわゆる「トービン税」についての議論の現状を伝える機会となった。またヨーロッパと北アメリカの活動家たちがラテンアメリカに人たちの直面している問題 や関心事について理解を深めることができ、それによって共通のプロジェクトの明確化において前進することができた。 1日目:最近の研究と論争 1日目は、CTTの主要な原理と、最近の数年間に当初のジェームズ・トービンの提案を現在のグローバル金融という環境に適合させるために行われてきた議論 についての学習にあてられた。始めに米国の経済・政策研究センター(CEPR、米国におけるATTACの協力団体の1つ)のマーク・ウェイスブロート (Mark Weisbrot)1が概略的な研究発表を行い、討論の中では以下の問題が提起された。 1.投機のレベルに応じた可変的な税率を考える必要性。例えば南米南部共同市場(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ)は、かつての欧州通貨 システムのような地域通貨圏を形成できるだろう - それは可変的な税率の適用によって、投機から自己を防衛するだろう。為替市場では、この4カ国の通貨レートは主要通貨(ドル、ユーロ、円)に対して日々変 動している。そこで、例えば基準レートあるいは標準レートを定義するために、過去3カ月間の為替市場におけるこれらの諸国の通貨の平均為替レートを計算す ることができる。各通貨の日々の為替レートが、この基準レートから±5%(ないし10%、もしくはそれ以上)の範囲内で変動している限りは、低い税率(例 えば0.1%)を適応する。もしこれらの通貨のうちの1つで為替レートが±5%の範囲を超えて変動した時は、極端に高い税率を適応することによって、為替 取引の封鎖と為替レートの許容範囲内への復帰をはかる。ドイツの経済学者P. B. Spahnによって定式化されたこの提案2 は、CTTを導入して通貨を投機から防衛することを決定した国家間グループ(ヨーロッパ共同体あるいはアジア諸国など)によって実施されることも可能であ る。 2.この提案がもし実施されていたなら、アルゼンチンが現在経験しているような財政危機は回避されただろう。この危機は、自由貿易、海外投資家への市場開 放、自由化そしてIMFが現地の政府との合意の下で強制している構造調整政策といったような多くの構造的要因に依るものだ。しかしながら、危機の大きな要 因の1つは、アルゼンチン・ペソが1991年以来アメリカ・ドルに固定されてきたことにある。これによってアルゼンチンにおけるビジネス活動は存立不可能 な状態に置かれ、その結果現在の危機に到った。もし可変税率のCTTによって投機から防衛された通貨ゾーンが存在していたなら、ドル化という破局的な誤り は回避できただろう。そうすればペソの為替レートは、長期的にはドル・円・ユーロの変動に従い、短期的な変動は縮小されていただろう。 この議論は、これらの案について討論する機会を提供した。アルゼンチンの出席者の多くは懐疑的であったが、その理由は理解できる。彼ら/彼女 らにとっては、CTTが提起されれるのが遅すぎたのである。経済的・社会的破局はすでに起きてしまった。この切迫した状況は、危機から回復するための提案 を必要としている。これはあらゆる国際的な提案が直面する困難の 1 つである。各国ごとに経済的・社会的状態が異なり、変化の速度も異なっている。しかし、アルゼンチン経済が現在の荒廃から抜け出して再建されなければなら ない時が来るだろう。もし歴史が悲劇的に繰り返されるのを防ごうとするのなら、国家の金融回路を掌握し、通貨主権を回復しなければならない。 2日目:実際の導入の方法をめぐって 2日目は、一連の提唱国グループが実際にCTTを導入する可能性についての議論にあてられた。どの機関が税を徴収し、歳入を再配分するのか? 英国のWar on Want3のスティーブ・チベット(Steve Tibett)と、フィンランドのNGLS のHeikki Ptomakki がこの問題についての意見を発表した。 スティーブ・チベット(stibett@waronwant.org)はCTTの管理に責任を負う国際機関によって採用されるべき目的と原理 を提示した。この基準によって、既存の特定の国際機関がCTTを管理する機関として適切かどうかを判断することが可能となる。目的に関して言うと、この機 関は徴税の実施と紛争解決を可能にする国際条約の枠組の中で、各国で税を徴収し、それを国際的に集中し、再配分できる必要があるだろう。透明性と民主主義 と説明責任 - これらはこの機関の活動のための、そして歳入が他の目的に転用されないことを保証するための三大原則である。War on Wantによる研究の結論として、この基準に照らすと既存の国際金融機関でこの基準を満たすものはない。したがって、下記の3つの基本的な部分から成る新 しい機関を作り出す必要がある。1) 評議会:国家の代表あら成り、徴税に関する基本的な法令を定め、この税の国内的・国際的な使途についての計画の策定に責任を負う。2)選挙で選ばれた専門 家による機関:これらの基本的な法令の実施に責任を負い、税収の使途についてNGO・労働組合・地域住民団体・国家そして国際機関によって提出されたプロ ジェクトを検討する。3)監査に責任を負う機関:国家や一般市民に対する説明責任を果たす。この機関は国連と連携するが、従属はしないだろう。 Heikki Patmakki (user@nigd.u-net.com)は、EUまたは他の国家グループがCTTを実施する(まず地域ベースで導入し、徐々に全世界的に拡大する)た めに採用できる包括的な法律案を提案した。この法律案によると、歳入の一部は徴税を行なった諸国に留保される(金持ち国も含めて)。歳入の約80%は途上 国に渡される。税の管理に責任を負う機関は、国家の代表者によって構成される評議会(欧州評議会がモデル)と、民主的議会(欧州議会をモデルとするが、よ り強い権限を持つ)によって構成される。実際、評議会はこの機関の税収額に基づいて予算を作成し、資金の使途を提案する。民主的議会がこれを修正および採 択する権限を持つ。この議会は国会議員、NGO、労働組合によって構成される。Heikki Patmakkiは、この両方の機関について、国の大きさに比例して議決権を割り当てることを提案している。たとえば、ブラジルのような大きい国は3票、 アルゼンチンのような中規模の国は2票、パラグアイは1票というようにである。全ての国がこの機関に加盟できる(民主的な国であるかどうかは問わない)。 規則によって、「南」の諸国が絶対多数を有するように保証する。「市民社会」の代表については、一定の基準(架空団体や宗派を除外するために基準を設ける ことは必要である)を満たす団体の中から抽選で選ぶ(これがもっとも恣意的でない方法だろう)。国連との間には、国連が改革を受け入れて、大国の影響力 - とくにこの税を拒否する米国のような国のそれ - が不当に大きくならないようにする限りにおいて、協力関係が確立されるだろう。 これらの提案をめぐって、民主的なルールに関する多くの議論が行われた - 発展途上国の代表権、NGOからの選出の方法、金持ち国が歳入の一部を留保する可能性、資金を提供されるプログラムの定義等についてである。これらの問題 について、一致した結論には到らなかった。合意に到るかどうかはわからないが、議論は継続されなければならないだろう。本当に重要なのは、どのようなタイ プの機関が歳入の民主的な配分を保証できるかについて、集団的な思考を開始することだ。 3日目:どのように活用できるか 3日目は、歳入の使途についての議論にあてられた。当然にも、前日に議論されたいくつかの点が再び取り上げられた。議論の導入として、 ATTACフランスの科学委員会のメンバーであるブルノー・ジュダン(Bruno Jetin)4が研究発表を行った。彼の発表の目的は、この税が発展のための資金としてどのように貢献できるかを示すことにあった。 前提:4つの原則 始めに、いくつかの原則を確立しておく必要がある。 1) CTTやその他の世界規模での課税(二酸化炭素排出税、環境税など)は、先進国がGNPの0.7%を政府開発援助に割り当てるという義務を相殺するもので あってはならない。政府開発援助は発展のための資金提供の主要な財源でなければならない。なぜなら、それは金融取引量の変動に依存しない、安定した資金供 給を保証する唯一の手段だからである(この点でCTTとは異なる)。 2) CTTとその他の世界規模での課税は、国内によける法人所得税・金融/証券税・個人所得税の減税という新自由主義原理主義者たちの執拗な願望を満たすもの であってはならない。世界規模の課税によって国家の減税を埋め合わせることが目的なのではない。今や国家の財政収入は、先進国ではGNPの26%、中進国 ではGNPの19%、最貧国ではGNPの9%にすぎない。アルゼンチン政府が国内大企業や多国籍企業に対して、あるいは資産をマイアミに投資する国内の中 産階級に対して課税できない(そのための政治的意志がない)ことこそがアルゼンチンの財政破綻の主要な要因である。 3) 発展途上国の債務は、ごく単純に、全面的に帳消しされなければならない。そうすることで、途上国は現在先進国に送金している年3000億ドルを支払う必要 がなくなる5。 4) 収入の格差とジェンダーの不平等を縮小するため、社会的支出は最貧層の利益となるものでなければならない。ネパールでは、男性の41%は読み書きができる が、女性ではそれは14%でしかない。一方、就学したことがない女児・女性の割合は、上位20%の最富裕層では54%であるのに対し、下位20%の最貧層 では85%を占める。 結論) これらの条件が満たされなければ、CTTととその他の世界規模での課税による収入は、発展への資金供給源を増加させることはないし、社会的不平等とジェン ダーの不平等を縮小させることもないだろう。 上記の前提の上で、発展のための資金の可能な供給源と発展のための費用を算出し、その中でCTTが果たす役割を検討してみよう。 (1) 発展のための資金の可能な供給源 a) もし22の金持ち国がGNPの0.7%を政府開発援助に充てるのならば、これは現在の水準である540億ドルから1560億ドルへ増加するであろう。すな わち、およそ1000億ドルが利用可能になろう。 b) 私の計算によると、2001年に1日の為替取引額は1兆2000億ドルであり、これに対して0.1%のCTTを課税すると、年間に1660億ドルが得られ る。ここでは、課税前の取引コストが取引金額0.1%、「コスト弾力性」が0.5であると想定している(つまり0.1%の課税によって取引コストは2倍に なり、その結果、取引量が50%減少する)。政府間取引に対する控除を考慮し、また、不正な課税回避の割合を50%と想定している。こうして意図的に控え めな仮定を用いている。したがって、平均収入を1000億ドルとして計算を進めても差し支えないだろう。 c) 国連が「開発のための金融」に関する政府間協議(モントレー・サミット)に向けて発表した発行した専門的報告書によると、二酸化炭素排出税による税収は 1200億ドルになる。四捨五入して1000億ドルと見積もっておこう。 これを合わせると、およそ3000億ドルが発展のための資金として利用できる。これを2000年9月に国連で各国政府首脳によって採択された 「ミレニアム発展目標」(MDGs)の費用と比較してみよう。 (2) 発展のための費用 利用可能な資金は、国際的な共益的プログラムと、国内発展プログラムのための資金として利用できる。 a) 国際的なプログラム これらは、国連が1999年以来、「グローバル公共財」と呼ぶようになった基本的な、人間的必要を満たすために必要な財に関連している。この新しい定義 は、WTOの「サービス貿易一般協定」(GATS)とうまく整合しており、世界銀行によって取り上げられている。つまり、一定の「グローバル公共財」は多 国籍企業が、(もちろん)最貧層にではなく、支払い能力のある人々に供給することができる。これらの基本的な、人間的必要を満たすために必要な財は、環境 や自然資源、澄んだ空気、水、世界遺産の保護、流行病の予防と根絶、平和、人道上の危機が起こった際の国際的な連帯、そして(より一般的に言うと)国境を 越えて世界のすべての人々に(肯定的または否定的な)影響を及ぼす全ての現象に関わっている。したがって、資本に対する規制は - それが国際的な影響を伴う金融危機を防止するという意味において - こうした基本的な財の一部を成すと主張することができる。国連によると、政府開発援助の約15%、すなわち50億ドルが現在「グローバル公共財」に充てら れている。健康と環境のためだけでも、少なくとも200億ドルの支出が必要だが、それは政府開発援助によっては調達できない。緊急の人道上の援助が、毎年 100億ドル必要だが、実際に現在支出されているのは50億ドルである。 したがって、これらの国際的なプログラムために必要な資金の合計は300億ドルとなる。 b) 国内的プログラム 人間にとって最低限必要なものを充足するための費用を考える上で、UNDP(国連開発計画)とユニセフによる調査報告 - 基礎的な社会サービスをすべての人々が利用できるようにし、極貧層(1日の収入が1ドル未満である10億人の人々)を半減するための費用に関する調査 - を参照することができる。これらの2つの目標は2015年までに達成されるべき「ミレニアム発展目標」を構成しており、毎年800億ドルの資金が必要とさ れる。世界銀行の最近の研究によると、極貧層を半減するには毎年350億ドルかかる。貧困削減に伴って、当該の人々の基本的社会サービスへのアクセスが徐 々に拡大することを想定して、世界銀行は2015年までにこれらの発展目標を達成するためにはさらに毎年540億ドルが必要であるとしている。 この仮定を除いて、基礎的な社会サービスをすべての人々が利用できるようにするための費用として世界銀行が見積もった金額も約800億ドルに なる。国内的プログラムへの資金として必要な金額としてはこの金額を用いることにしよう。 合計すると、国際的および国内的プログラムへの資金として必要な金額は 200+100+800 =1100億ドルとなる。一方、可能な歳入は3000億ドルである。 結論 これらの数字からどのような結論が導かれるだろうか。 先進国の政府開発援助をGNPの0.7%に増やせば、それだけで「ミレニアム発展目標」の資金は充分に確保できる。それができない場合でも、 為替取引税か二酸化炭素排出税を充てれば十分である。ここでは、極貧層を半減させ、基礎的な社会サービスをすべての人々が利用できるようにするという目標 について述べているということを思い出していただきたい。 つまり、もし3つの資金源のうち2つが確保されるなら(もちろん3つが全て確保されればもっと確実だが)、「ミレニアム発展目標」を大幅に超 過達成することが可能である。極貧とそれほど極端ではない貧困(5ドルの日収があったとしても、非常に貧しいことには変わりはない)が完全に解消され、最 低限ではなく充分な社会サービス(例えば、「ミレニアム発展目標」が対象としている読み書きができない成年のための基礎的な識字教育だけでなく、もっと本 格的な教育)を提供できるようになるだろう。 明らかに、発展は単なる資金の問題ではない。それは結局、人権や社会権の尊重という問題であり、国内における大衆運動によってのみ実現可能で ある。しかし、資金もやはり重要である。児童労働をなくすには、それに依存せざるをえないような家族に最低限の収入を保障しなければならない。親の健康と 労働能力とが急速に減退している場合はなおさらである。次には学校を建設したり既存の学校の設備を整えることが必要であり、教員に賃金を支払わなければな らない。 (3) CTTの役割 では、通貨取引税(CTT)の歳入は何のために利用できるだろうか。 1) 政府開発援助が0.7%という目標に到達しない場合、CTTの歳入を「ミレニアム発展目標」の最貧層に関わる目標のために使うことができる。これは、当該 の人々がその目標の決定と実施に対して発言権を有することが前提となる。 2) 政府開発援助が0.7%まで増加した場合、CTTの歳入は追加的なものとなり、社会や環境に関する追加的な支出に充てることができるだろう。では、その配 分はどのように決定するのか。CTTの徴収と分配に責任を有する新たな国際機関のみがそれを決定できる。それはスティーブ・チベットが提案した基準に適合 するだけでなく、その運営においても資金の分配においても、民主主義を最大限に重視しなければならない。各国への歳入の分配は、人口の規模に比例し、さら にUNDPの「人間開発指標」のような基準も加味し、この指標の改善を条件とするべきだろう(それによって、ジェンダーの不平等についても、より有効に対 応できる)。要するに、「人間開発指標」が低い国ほど歳入の分配が大きくなるようにするという考え方である。また、環境や社会的問題の面での前進を考慮に 入れた基準を設けることも必要だろう。不平等が縮小された国が、より多くの分配を受けるようにするのである。資金を受け取っていながら進歩がなかった国 は、分配を減らされる。また、Heikki Patmakkiの提案について、評議会と民主的議会で「南」の諸国の代表が絶対多数の議決権を持つべきであるという点については全体的な一致が見られた ようだが、政府の性格に関わりなく全ての国がこの機関に加盟できるという提案については意見が分かれる。民主主義の実現は、歳入が最終的に社会的目的やエ コロジーに関する目的のために使われることを保障する唯一の道である。したがって、各国において、この資金の具体的な使途を、「参加型予算」6モデルに 沿って、住民投票によって決定することも可能である。優先順位の決定にあたって、政党や選出された代表も一定の役割を果たすことができる。例えば、「第2 回世界社会フォーラム」の開催中に、武器売買の禁止によって生み出される財源の配分について、6つの可能な選択肢から選ぶ模擬投票が行われた7。同じ方法 をCTTの歳入についても採用できる。他の国では、別の方法を採用することもできる - その国の人々の好みや伝統に応じて適当な方法を見つければよい。各国に配分された資金は、国内の地域あるいは都市のレベルに配分され、そのレベルにおいて 住民投票が行われるかも知れない。全国レベルの住民投票と地方レベルの住民投票のあらゆる組み合わせが考えられる。住民投票を実施する主体は国家でもよい し、CTTの徴収と再配分に責任を負う国際機関の代表機関でもよい。このモデルはポルトアレグレ市とリオ・グランデ・ド・スル州において実施されている 「参加型予算」のアプローチを基にしたものであり、民主主義に決定的な役割を与えている。この観点から、私は、CTTの徴収と再配分に責任を有する国際機 関は、国連の世界人権宣言とILO(国際労働機関)が定めた基本的労働条件を尊重する政府の代表によってのみ構成されるべきだと考える。これらの諸権利が 本当に尊重されているかどうかは、国際人権連盟(ILHR)、アムネスティー・インターナショナル、国境なき記者団(RSF)などの団体や、国連人権委員 会の報告に基づいて評価できる。それ例外の方法では、CTTの資金が有効に活用されるために不可欠の民主的ルールを為政者がどの程度尊重しているかを判断 するのはむずかしい。最後の手段として、ある国の国際機関への参加/不参加は、その国の労働組合代表や独立的なNGOの意見に基づいて決めることもでき る。上記の条件が満たされない場合、この資金が当該の人々に届くことを保証するために必要な最低限の民主主義が尊重されていない国に割り当てられる資金 は、予備基金として積み立てられる。この資金は、最低限の民主主義が尊重されたときにただちに分配される。 この構想は、財源の再配分において民主主義を問題の中心に位置づけようというものであり、もっとも空想的なアプローチかもしれない。しかしこ れは議論の中で提起された問題を考慮に入れた唯一の構想である。実際には優先事項と概念は北と南では異なる(例えばエコロジーに関して)。国際機関からの 資金を受けた社会政策の内容は、多くの場合、当該の人々に相談することなく決定され、「上から」押し付けられる。アルゼンチンの北部から来た参加者は、世 界銀行がアフリカの若者向けに立案した教育プログラムをアルゼンチンの彼女の地域に押し付けたことを話した。ブラジル人の発言者は、地方政治においてはポ ピュリズムが重要な問題であることを指摘した。資金の適切な配分と利用は幻想だと言うのである。最後に、ポルトアレグレ市の公共事業計画の携わっている人 が、世界銀行が融資を行う際に押し付けるコンディショナリティー(条件)のおかげで遭遇した困難について強調した。CTTによって得られる資金の場合で も、基準が厳しすぎて、現地で決定された優先事項と一致しないようになる危険はないのか。 これらの問題の全てに対する決定的な答はない。起こりうるあらゆる問題に対する解決策をあらかじめ予想することはできない。ましてや私たちは まだ想像したこともない問題を扱っているのである。しかし、ものごとの状態を変えようとする時はいつでもそうではないのか。CTT、あるいは他の何かの提 案が必ず成功すると保証することは可能なことだろうか。開発援助に関する過去の失敗の経験は、少なくとも何をすべきでないのかを教えているという点で有益 である。しかも、CTTが日の目を見るのは、新自由主義に対する政治的勝利と、それに伴う民主主義の拡大の後のことだろう。だからこそ、地域における優先 順位の決定や、エコロジー、教育、健康などに関わる政策の内容は、現在よりもはるかに好ましい条件の下で再考され解決されるだろう。 以上述べてきたように、CTTと発展のための資金に関するセミナーは、最終的な結論には到達しなかった。しかし、今後豊かな討論が継続される ことを可能にしたという価値はあった。 [翻訳:小堀聡/喜多幡佳秀] 原題:"Currency Transaction Taxation and Financing Development" - Report on the seminar organised by ATTAC France at the Second World Social Forum at Porto Alegre 著者:Bruno Jetin, ATTAC France. http://www.attac.org/fra/cons/doc/doc14en.htm ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年7月3日号(通巻135)号 [トー
ビン税論争]
実行可能なトービン税の確立を: 「正統派経済学」を信じてはいけない! Debate. Making a Workable Tobin Tax: Don't believe in the economic orthodoxy! By Heikki Patomki この論考は、前号で紹介されているOECDのレポート「トービン税―本当にできるのか?」(Debate. Tobin Tax: Could it Work?[2002年OECD報告書「為替市場の揮発性と証券取引税」所収]への反論である。 新古典派経済学は、一連の比較的単純な仮説を基礎にしている。それによると、すべての経済発展は市場の需要と供給によって分析される。正統派経済学の標準 的な原理は、価格(開放市場で自由に決定される)が需要と供給の調整を最適に保証するというものだ。この調整は専門用語では「均衡」と呼ばれる(これは ニュートン力学から借用した用語である)。この学説が主張するところでは、開放・自由市場における均衡は経済効率と社会(単に、効用と消費を最大化しよう とする快楽主義的個人の総和として考えられている)の全体的な福祉を最大化する。 OECDの「為替市場の揮発性と証券取引税」の冒頭に、「外国為替市場は世界経済が機能するのに欠くことが出来ない。しかし、時には過度に不安定となり、 時にはその動きは破壊的な影響を及ぼす」とある。トービン税が持ちうる効果について特別の検討がなされている。 たとえば、トービン税について次のように論じられている。トービン税は「流動性と情報を提供することによって市場を安定させる取引」と、「市場を混乱させ るノイズ取引」を区別することなく、頻繁に行われる取引にペナルティーを科す。新古典派の考え方では、流動性取引は合理的であり、したがって市場の効率を 高めるが、一部の取引は単なる「ノイズ」である。この議論は「パレート均衡」という概念を前提としており、それを基準に取引が合理的かノイズかを判断す る。しかし、このような実効的均衡は単なる理論的概念であり、想像上のものだ。実際には、均衡理論の論者たちはどのような「実効的均衡」が実社会で機能し ているのかを知らない。 また、参加者間の「実効的均衡」が経済全体の効率を高めるというのも、新古典派経済学の典型的な仮説である。こうしてトービン税の効果は、為替市場の参加 者にとっての費用効果という観点からのみ分析されている。この観点からOECD報告は、その効果は両面があると述べている。つまり、「トービン税が揮発性 を減少させると、ヘッジ商品の価格が大幅に下落する。一方、コスト面から見ると、流動性の間接的効果により、揮発性が高まり、トービン税は低コストのヘッ ジを可能にする取引に大きな影響を及ぼす」。 その後の議論の多くは、信用・証券・通貨市場は経済のファンダメンタル(実勢)を正確に反映するという仮説に基づいている。OECD報告書は、「1カ月単 位での外国為替市場の揮発性は、経済のファンダメンタルの変動では説明できない」ことを認めている。しかし、重要なことは、この問題をどのように概念化す るかということだ。OECD報告書は、公的な情報と私的情報の区別によって、取引量と揮発性の相関関係が説明できるとしている。「揮発性の多くの部分は私 的な情報と関連していると考えられる。ただし、これは必ずしも私的な情報がファンダメンタルに関係していないことを意味するものではない」。 正統派の経済学説を信用してはいけない。「効用と消費を最大化しようとする快楽主義的個人の総和」からなる社会というもっともらしい仮説を離れれば、新古 典派の経済学の理論は何の役にも立たない。標準的な需要と供給の曲線は誤りであり、誤った結論へ導くものだ。「効率的な金融市場」という理論の前提となっ ている仮説も根拠がない。金融取引の参加者たちは、開放的なシステムの中で取引を行っており、将来について同じ、正しい予想を持って行動するということは ありえない。ところが、これが「実効的均衡をもたらす合理的取引」の前提になっているのだ。・・・ (ケインズの影響を受けた)トービンは当初、過剰流動性をもつ「効率的」な金融というのは、短期的効果しか見ない考え方であり、非合理的な投資であると論 じていた。これは国家が自主的に経済政策を決めることを不可能にし、資金の誤った配分に導く。・・・グローバルな相互依存関係のため、金融の変動は金融活 動に関与していない人々や意志決定に参加していない人々にも大きな影響を及ぼす。つまり、何百万人もの人々が、繰り返される金融危機の影響を受け、何の罪 も犯していないのに罰せられるのである。責任をとるべき多くの者が救済され、過ちを犯しても罰を受けることはない。それどころかその特権を活用することに なる。「利益は個人に、リスクは社会に」という原理は公正ではない。 公正という観点からのより一般的な議論は、グローバル金融市場が地球規模の格差拡大に責任を負っているという主張から出発する。・・・この観点から、トー ビン税はより公正なグローバル・ガバナンス(地球規模の統治)に向けた重要なステップである。トービン税は為替市場の金融投資家から歳入を得て、公共的な 資金を生み出す。 別の観点から言うと、トービン税に関する論議は、民主主義という共通の理想を出発点とすることもできるだろう。実際、先に触れたような論議は、ごく簡単に 民主主義についての論議に発展する。たとえば、トービンが国家の経済政策の自立性を擁護しているのは、経済政策の民主的自己決定を擁護する議論であ る。・・・トービン税は世界規模の民主主義についての議論の出発点になると考えられる。 最大限に一般化すれば、トービン税を擁護する議論は、人間解放の視点から展開できる。現在の国際金融の組織的編成は自然なものであり、もっとも効率的なも のであるというのは間違っている。しかし、こうした間違った前提が、金融活動やそれに関連する力関係の維持のために必要とされるのである。トービン税は世 界金融市場による災禍に対する万能薬ではないが、ある程度は望むべき結果をもたらすだろう。したがって、トービン税は「人々が望まない、不必要かつ抑圧的 な状況から、人々が望み、必要とし、しかも人々を力づけ、発展を助ける状況への移行」という意味において、解放への1つのステップとなる。 要約すれば、OECDの「為替市場の揮発性と証券取引税」の問題は、その議論の多くが誤った理論構成を前提としているということだけではない。同じぐらい 重要な問題は、通貨取引税を経済効率の問題としてのみ取り上げていることである。トービン税には、それ以外の多くの重要な価値-力関係、自治、民主主義、 公正、人間解放など-が関わっている。 [トー
ビン税論争]
トービン税は導入可能か? Debate. Could a Tobin Tax Be implemented? By OECD トービン税が世界規模で実施されないなら、投機活動は非課税の地域へ移動するだろう。良い例は、スウェーデンにおける株式・債権取引税である。他の金融取 引や実物取引もトービン税を回避する手段を与えるだろう。たとえば、異なる通貨での石油やその他の商品の売買契約を相互に交換するという方法もある。しか し、外国為替取引のコストが高騰し、非生産的な金融工学に、より多くの資源が割り当てられることになるだろう 最近のトービン税擁護論では、トービン税によって多くの収入が得られ、開発援助などに使うことができることが主張されている。2001年に(国際決済銀行 の調査によると)、1日あたりの取引額は1兆2500億ドルである。税率0.5%(トービン税の上限と考えられる)では、約1兆5000億ドルの税収が得 られる。これは現在の海外開発援助に使われている金額とは桁違いの金額である。 トービン税は、実施上の問題を別にしても、この税の導入によってこの税収の基盤そのものが縮小するという問題がある。・・・ もう1つの問題は、「トービン税」が海外援助のための資金調達の最善の方法かどうかである。経済的観点からは、目的税は最も効果的な方法ではない。そのよ うな援助を行うことに価値があるとしても、歪みが少なく、確実に収入のある方法で資金調達することが最良の方法。これがトービン税で達成されるとは思われ ない。「トービン税」の人気は、この税が比較的金持ちの人たちが支払うものであるという印象によるものだが、実際には税というものは価格や賃金の変化へと 転化されるのであり、トービン税の負担が援助を受ける側の国の人々に負わされることもありうる。最後に、トービン税を海外援助とリンクすることは、そのよ うな資金移転の増加が好ましいものかどうかという問題から政治的関心をそらせることになる。 ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年6月26日号(通巻134)号 実
行可能なトービン税をつくる―ジョセフ・スティグリッツに聞く
Debate. Making a Workable Tobin Tax: Interview with Joseph Stiglitz by Sonia Mikich 【ノーベル賞受賞者、ジョセフ・スティグリッツへのインタビュー、ドイツのテレビ局ARD, Monitorで2002年5月13日に放映。以下「聞」=聞き手、「ス」=スティグリッツ=ス) 聞:毎日世界中で投機的取引により15億USドルが動く。80%が短期的な動きだ。現在この動きへの課税が求められている。あなたはどう考えるか。 ス:トービン税導入には二つの動機がある。一つは世界的な公共ニーズのための資金源が必要だということ。世界が統合されてくると、世界レベルで満たすべき ニーズが増える。AIDSなどの世界的病気、対テロ戦争、環境改善、途上国の貧困対策。開発という課題には500億ドル以上が必要だが、現在その収入源が ないため、米国が世界を人質に取り、国連の行動が気に入らなければ支払いを拒否するという許し難い状況だ。トービン税はこの収入を得る一つの方法だ。トー ビン税は多大な象徴的価値がある。最近は金融市場が世界を動かしている。貧しい国などの人々を犠牲にする非常に不安定な状況をもたらしている上、国内での 交渉力を奪っている。資本に税をかけようとすれば、自由移動できる資本は「では手を引く」といえるからだ。つまりトービン税は象徴的だがそれ以上でもあ る。トービン税の重要な点は、同税からの収入を公共のニーズに充てる点だ。私たちが集団的行動を起こす必要があることを認識している。世界レベルで集団的 行動を起こすには資金がいる。それが今私たちにはない。つまりトービン税は二つのことを同時に行う。世界レベルで非常に重要な公共のニーズを満たすための 収入のベースを提供すること、世界中を破壊してきた資本の自由移動に関わる不均衡を強調することだ。 聞:トービン税の支持者は同税が全体のメカニズムの一部でなくては、抜け穴がありすぎて効果がないという。あなたは同税を始めるにあたって欧州は充分だと 思うか。 ス:そう思う。よいものに課税するわけではないから、金融市場を安定化させるのに大成功しなくても悪いほうには転ばない。投機的取引が減って世の中が悪く なると思わないだろう? また世界的効率も悪影響を受けない。欧州が懸念すべきは欧州外で取引が行なわれること。だから現在の他の税と違い、トービン税は取引が世界のどこで起ころ うと欧州住民の資本にはすべて掛けることが重要だ。だから技術的に実行できるかが問題だと思う。 聞:技術的か政治的か? ス:両方だ。租税回避ができないように法律を設計できるか? 私が気になっているのはデリバティブとオプションだ。克服できると思うがもう少し研究が必要だ。金融市場の人々は租税回避に非常に創造的だ。私は象徴的な だけでなく効果的な税制が欲しい。 トー
ビン税―本当にできるのか?
Debate. Tobin Tax: Could it Work? by OECD [2002年OECD報告書「為替市場の揮発性と証券取引税」より] [訳注:volatilityを「揮発性」と訳している、「極度の不安定性」という意味で使われている] 外国為替市場は世界経済を機能させるのに必要不可欠だ。しかし時にこれは過度に不安定であるように見える。市場原理に反する過度に変動する為 替相場は経済に負担を課す。また時に為替市場からの圧力が通貨政策作りを複雑にしてきた。外国為替市場の激しい変動に対する懸念から、多くのエコノミス ト、政治家などが対抗策を提言している。最もよく知られる通常「トービン税」と呼ばれる提案は、すべての外貨取引きへの課税だ。これは証券取引税のケース と同じだ。このような税は外貨などの資産を比較的短期間持つ人々に、特に大きな負担を課す。最近の提案者はトービン税が生む多額の収入を価値あるイニシア チブの資金に充てることができると主張している。 ■為替市場は過度に揮発性があるか: 「特に短期間の為替相場の動きが市場原理で説明できる範囲より大きい」との論が確立されている。だが為替相場の根本的決定要素の変化を示すものとして評価 された新しい経済データに対して、トレーダーが過度に反応したのではなく、経済原理と関係なく動いている、という範囲がどれくらいなのか明らかではない。 ■トービン税は揮発性を抑えるか: この疑問に対する確固たる答えはない。トービン税は不安定をもたらす取引と、流動性や情報を提供して市場の安定化を助ける取引を区別せず、すべての短期的 取引に課税する。証券取引税が導入された金融市場では取引量に大きな影響はあったが価格の変動性は影響を受けなかった。 ■経済効率の点でこの税の効果はそのコストを相殺するだろうか: 為替市場の揮発性が貿易と投資を妨げるか否かについて、どちらの論にも、それを裏付ける証拠が挙げられているが、悪影響があるという調査報告によっても、 その影響は小さいとされている。これは低コストのヘッジ・ファンドを利用できるためだろう。もしトービン税が揮発性を抑えるならヘッジ・ファンドの価格は かなり下がり、その必要性も薄れる。だが流動性が間接的に影響を受けて揮発性は逆に上がる。トービン税は特に低コストのヘッジが可能な取引に影響を与える だろう。つまり潜在的利益よりマイナスのリスクの方が高い。 ■このような税が実行できるか: 原則として、トービン税は世界規模で、全ての金融市場含めて実行されなければならない。そんな税を実行する政治的メカニズムは今のところない。 ■トービン税からの潜在的収入は: 実行できれば税収はかなりになるが、税のベースそのものが縮小するため現在の予測より少ないだろう。いずれにしろこの税収を開発援助などの特定の支出に充 てることは経済的に効率的でも政治的に適当でもない。 ■外国為替市場は株式市場より揮発性が低い: 為替市場は国債市場より揮発性が高いが、株式市場よりは低い。だが外国為替市場の月単位の揮発性は経済原理の動きでは簡単に説明できない。日単位の揮発性 も高いがこれは為替相場を設定する際のノイズと見れらる。このため過度の揮発性があるとレッテルを貼られる。取引量と揮発性が正比例しているから投機が価 格を動かしているかに見える。だがこれは単に取引量と価格が共に新情報に反応しているだけかもしれない。また、過度の揮発性はトレーダーが新情報に過剰反 応しているか関係ない情報を得ているためかもしれない。新情報により間違った価格設定が行なわれその後直されることも取引量と揮発性の比例関係を強める。 ■トービン税は過度の揮発性を抑えるか: トービン税により短期間の為替所持は敬遠されるだろう。一年以上所持するトレーダーにはこの税負担は非常に小さい。つまりこの税は短期的取引を大きく制限 し、長期的取引にはほとんど影響を与えない。だが短期的取引の制限は必ずしも揮発性を抑えない。同税は危機管理しようとするトレーダーの短期的取引にも課 税するため、市場の流動性に対して逆効果となる可能性がある。弱い市場では各取引の価格に対する影響力が強くなるため揮発性が高くなるかもしれない。金融 市場における証券取引税の経験(イギリスでの印紙税、米国および東アジアの市場、1991年1月1日まであったドイツの証券取引税、最近のパリ株式市場へ の取引費用の影響評価)からもその効果は疑わしい。 ■付録2■ 討論:トービン税の将来―世界規模の課税 By Dominique Plohon [2002年5月17日、ATTACフランス主催のセミナー「世界規模の課税と金融発展」でのドミニク・プリオン氏の発言から抜粋、フランス版ニュースレ ター344号より、訳:林 昌宏]「課税の目的」 トービン税の目的は3つある。 1?公的支出といわゆる商品として扱われないものに対する財源の確保 2?企業、投資筋、預金者、消費者などの私的行動に一定の圧力をかける。 3?これらのプレーヤーの所得再分配を図る。 これらの目的は原則的に相互補完的であるが、競合的でもある。すなわちトービン税は投機筋の行為を削減する(目的の2)がため、財源の確保(目的の1)に 対立することになる。 経済原理によれば、課税は次の存在に基づく。 1?市場原理では生産されず、その消費活動は共同的な公共財 2?外生的プラスマイナス要因(経済学者ピグーの論理より):個人の経済要因の計算において外生的であり市場では規制できない経済現象。 公共財と外生的要因の2つの存在は相互補完的であり、市場以外の公的介入を要するという市場原理からは離れたところに位置すると言う共通点がある。 「なぜ世界的課税でなければならないのか?」 現在の課税システムは外部に対して開放されているという前提では構築されていない。 現代、展開しているグローバリゼーションの過程は、国家の主権事項である貨幣や課税などの国家権力に疑問を投げかけている。それゆえ、国内の課税体制との 関係で世界的な課税体制のあり方を見なおす必要がある。世界的課税の目的は国内課税の目的と同じであるが世界的課税は世界的経済レベルの話である。すなわ ち、国際的規模で公的財源を徴収する、世界的プレーヤーに対して一定の圧力を加える、世界的規模のマイナス外生的要素に対抗する、世界的公共財のための財 源を確保することである。 より詳しく世界的課税体制の必要性を4つの点にわけて述べる。 A/グローバリゼーションの過程で国内課税対象が侵食されている。すなわち金融自由化により最も課税が低い国へ資本が自由に移動し、徴税を低下させてい る。 B/グローバリゼーションが経済と国内公共財政の遊離を拡大した。一国の課税方針は他国の経済と課税方針とのバランスに左右される結果となっている。この ような現状において2つの政策が考えられる。 1―課税競争政策(課税のダンピング)、現在、最もよく見られる例であり、国の課税ベース引き下げにより資本を世界から呼び寄せる方法。タックスヘイブン などはこの極端なケースである。 2?国家の課税対象を確保するために国家間が協力する政策。地域または世界的課税体制の構築が、国家間の協力をより押し進め、課税手段確保を可能にする ケース。 C/グローバリゼーションにおいては資本移動がより素早くできる者が徳をするという、経済を構成する要素の1つである課税上の不平等を生み出す。すなわち 国際的規模で活躍している上級管理職者や機関投資家や多国籍企業、彼等は意志決定が世界的規模で可能であり、課税に対しても世界的な取り組みをしており、 課税が国内のみに限定された効力しか持たないことを利用して国家間の課税体制のずれを利用して課税を逃れている。この多国籍企業の政策は課税の分野で非常 に効率よく運営されており、本社や子会社の所在地の決め方や、国際的グループの間で都合の良い架空の価格(価格移動)でやり取りを行うなどといったやり方 で課税を逃れている。 不平等の根源であるグローバリゼーションによる歪みのなかでも次の点を強調したい。大部分の労働者は国際的にほとんど移動できないが資本を保有する機関投 資家などは金融の自由化のおかげで自由に移動できる。この状況から機関投資家たちの課税は下がる傾向にあり、また源泉課税を余儀なくされる労働者とそうで ない労働者との間の格差も拡大してきている。この課税の歪みは金融のグローバリゼーションを直接の原因とする重大なる不平等の源泉である。 D/グローバリゼーションは、世界規模で元来、商品としては扱われるべき対象ではない新しい要求を生み出した。 1?世界公共財:水、環境、安全 2?世界的規模のマイナス外生要因:投機、他からの公害 これらの世界的公共財と世界的外生要因は、場合によっては国際的世界的規制により世界的規模の課税でのみ効果的に財源を確保でき、また規制できる。 「世界的規模での課税の政策的制度的条件」 A/世界的規模の課税の導入にあたり1つの大きな反対意見に国を超えた公的権力の不在がある。民主的に公的権力を設定し、また徴税した資金の使途と同様に 課税ルールの適用と運用のための公的権力の不在である。 この反論は受け入れがたい。国際的協定が国家による課税の批准と課税による財源の管理運営を可能にする。税源の管理と割り当ては現在の政府間で機能してい る国際的機関に委託できるであろう。この基金は“1つの国家、1つの声”という原則の国連のシステムと結びついた機関に託すことが望ましい。 B/“all or nothing”という議論は同様に避けなければならない。世界規模の課税批准は例えばヨーロッパ連合だけでまず始めると言うことも可能である。 C/世界規模の課税は現在進行中であるグローバリゼーションの流れを変えるのには十分ではないであろう。国内及び国際的権力が同時に他の手段、特に規制を かけるなどと言った手段を講じることが必要である。資本の国際間の移動に対する再規制は国際的規模の課税を批准するにあたり必要不可欠である。 D/国際的課税は国内の課税と同様に技術的問題ではなく政治的選択である。技術的解決方法は明らかになっており、今、求められているのは国家の政治的意志 決定である。国際的課税はまた、企業や個人、市場関係者の行動を制御する必要性があるという議論を作り出す重要な教育的価値をも持つ。世界的課税は、現在 のグローバルな経済システムを再検討する上で社会において明確な位置付けをもつ。 ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年6月19日号(通巻133)号 トー
ビン税は現実的か?
Tobin Tax : Could it Work ヘルムット・ライゼン (OECD開発センター) 「OECDオブザーバー」2002年5月号より 国際金融取引への課税は、たとえ現実に導入されたとしても、その提唱者が言うような発展(開発)の目標を達成することは困難であろう。 最近では発展(開発)のための資金調達について議論される時、トービン税への言及を避けることはできなくなっている。一般的に投げかけられる疑問は、発展 のための資金を調達するために国際的な資金の移動に課税することが現実的かどうか、また、それが望ましいことかどうかということだ。この問題は今年3月に メキシコ・モンテレイで行われた「国連・発展のための金融会議」でも取り上げられた。この会議には、各国の首脳や主要な国際機関の代表が、世界の貧困を減 らす方法を議論するために集まった トービン税のもともとの狙いは開発ではない。実際には、国際金融の「歯車に砂」を投げかけ市場の安定を図るという目的で、1972年に米国の経済学者であ るジェームス・トービン氏により提唱された。これは国際為替取引に課税をするもので、ある政府やNGOはこのような為替取引に少しの税金を課す事により多 大な歳入を得られ、それを環境問題、保健プログラム、貧困削減などに使うことが出来ると主張する。例えば、0.05%から0.25パーセントを課税する事 で年間500?2500億ドルを生み出せると算出される。しかし、これらは現実性のある数字だろうか?為替市場は電子取引により即日に清算、差額決済を行 うことが増えている。外国為替市場における現物、先物、スワップ取引に関する調査で一日の取引高が1998年には1兆4900億ドルあったのに対し 2001年には1兆2100億ドルと19%も下落、ユーロによる通貨統合、現物取引の電子取引化の拡大、銀行界の合併と再編が縮小の要因と言えるだろう。 この傾向は引き続き問題を生み出す。それは課税基盤の縮小である。 そして、電子取引の成長にあっても、金融機関やそれ以外の顧客との取引よりディーラー間の為替取引が取引高の半分以上を占めている。ほとんどの取引が業者 間のリスクヘッジのために行われているのである。トービン税は各取引が課税対象となることからリスクヘッジ取引を減らすと見られる。従って、それは為替取 引の減少をもたらすだろう。 ・・・ そのうえ、課税逃れが増え税収も減るだろう。そこでは二つのことが考えられる。一つは非課税地域の外為市場に取引が移ること。もう一つは、非課税の手段に よる取引である。 市場の移動は重要な為替取引市場がある全ての地域でトービン税を課すことで防ぐ事が出来るだろう。取引はタックス・ヘーブン等の市場に流れるかもしれな い。それを防ぐためにはそこでの取引に罰則税を課し、正当な市場でだけ取引を許す事である。・・しかし、それは小さな市場に対してしか効果がない。フラン クフルトや香港などの大きな市場でトービン税を採用しないと、大量の取引が非課税地域に流れる。そして課税基盤の崩壊を引き起こす。 課税対象である外為取引を非課税の取引手段で代替するのを防ぐために、全ての金融取引そして税逃れのために出てくる新しい取引に対してもトービン税を課す 必要がある。例えば、現物取引にだけ課税すれば、短期先物取引に逃れられる。ゆえにこれらも課税対象とするのである。 ・・・ 他にも不安材料はある。今日の政治リーダーが本当にトービン税を開発の為に当てるか?トービン税を行政的に回収可能か?援助に役立てるか? 他にも方法はある。例えば、貧困削減のために投資する企業に税制上の優遇を与えるとか、IMFの特別引出権(SDR)の新規発行によって特別の信託基金を 確保するなどの方法が論議されている。これらの方法については、トービン税と同様に慎重に検討されるべきである。 ヘルムット・ライゼン氏への反論: 現実的なトービン税のために Making a Workable Tobin Tax: A Response to Helmut Reisen ディーン・ベーカー(経済・政策研究所副所長、ワシントンDC) 最近発表されたOECDのエコノミストであるヘルムット・ライゼンのコラム“A Tobin Tax: Could It Work(トービン税は現実的か)”は為替取引における課税の難しさやトービン税が開発のための資金調達には不十分であると指摘した。彼が実施上の問題と して挙げているのは、タックス・ヘーブンにおける取引と、先物・オプション・スワップなど非課税のデリバティブ取引である。 こうした心配はもっともである。しかし、それはほとんどの税に対しても言えることだ。たとえば、現在米国の多くの企業が、所得税を逃れるためにバーミュー ダやその他のタックス・ヘーブンに法人を設立している。このことをもって所得税の現実性に疑問をはさむ議論が可能かもしれないが、これに対する対案は、こ うしたゲームを禁止する法律の制定であり、それは米国議会でも提案されている 同様に、地理的な問題は、地域に関係なく全ての取引を課税対象とすることで解決できる。 課税対象取引がデリバティブに代替されるという論点は、よく取り上げられている。トービン税の支持者たちの一部は、そのような取引もスポット取引につなが るなら課税対象になると指摘しているが、ほとんどの場合デリバティブはスポット取引を伴わない。したがってデリバティブ取引に対するトービン税の影響はご く限られる。 しかし、この問題はこうしたデリバティブ取引の証書にもトービン税を課すことで簡単にクリアできる。通貨オプション、先物、スワップ等も、通貨そのものの 取引と同様に、好ましいものではない。これらの取引に課税すれば、開発のための資金調達に大いに貢献する。トービン税の支持者の中には、国内の金融取引も 同様に課税対象とするべきという意見もある。 税金逃れの誘因は、税率に比例する。また、分散的な取引よりも高度に集中した取引の方が課税しやすい。トービン税と著作権料を比べると、トービン税のほう が個別に徴収される著作権料よりもはるかに簡単に徴収できる。 ・・・ ライゼン氏のもう1つの論点、つまり為替取引が減少し、課税基盤が狭くなると言う指摘は、むしろトービン税を擁護する論点であると言える。トービン税の支 持者たちは、多大な為替取引量を金融不安要因と見る。金融市場の安定の為には取引量の削減が望ましい。 ・・・ ライゼン氏が言う取引量の大幅な減少は、実際にはトービン税の問題なのではなく、利点である。この税の負担は、消費者には転化されず、金融機関が負う。 トービン税は企業が予期せぬ市場の混乱のために行うリスクヘッジを減らすものだとしても、企業はそこに価値をほとんど置いていない。もし、企業がそのリス クを額面の0.1%以上として評価するなら、トービン税はリスクヘッジを妨げるほどのものではない。 OECDがトービン税のメリットについて重要な問題を提起するのは歓迎すべきことだ。重要なのはトービン税の支持者たちがそれらの問題を取り上げる準備が できていることである。今回のライゼン氏の指摘は、トービン税の論拠を大きく揺るがすようなものであるとは思えない。 ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年4月10日号(通巻123)号 追
悼・ジェームズ・トービン
今の時代のエコノミストにない謙虚な研究姿勢 An economist from a different era By Emiliano Brancaccio, Granello di Sabbia. Translated by Gulliver Cragg 「自らリーダーとなることは望まなかったが、それでいて常に広く影響力を持っていた知識人」-数年前にFederico Caffe氏はジェームス・トービン氏についてこう表現した。彼はトービン氏のシャイでソフトな性格と、その経済研究の発展に対する並外れた影響力という 対照的な姿を強調した。その優雅な謙遜は、溢れんばかりのナルシズムが横行している今日にあっては、別の時代のもののようだ。一方彼は市民としての情熱と 政治的なコミットメントを緩めなかった。同氏の科学的研究は非常に広範囲に渡った。スウェーデン科学アカデミーが1981年にノーベル経済学賞を彼に授与 した際の文書は「現代のエコノミストの中で、彼に匹敵するほど経済学研究を活気付ける影響を及ぼした者はほとんどいない」と述べている。ポートフォリオ選 択に関する彼の理論は、今も多くのマクロ経済と金融分析の評価基準である。彼が世に出した膨大な量の論文を読み解くカギは、「政治が経済システムの動力に 相当な影響力を持つべきだ」というケインズから得た彼の信念だ。トービン氏の理論の基本論は経済政治の意志決定者が広範囲にわたる影響力を持つべきことを 求めている。これらが金融活動・該当国の資本からの収入のレベルと構造に対して、無視できない影響力を持つべきだ、その権限を広げるための適当な行動によ り、当局は金利を下げることと金利に伴う公共の債務負担を減らすことができるだけでなく、民間投資、それによる雇用・生産・収益の分配を短期的および長期 的に刺激することができるべきだ、というものだ。この考えは現代の論議と非常に関係の深いものとなっている。トービン氏は経済に対する政治の介入はまった く意味がないというイデオロギーに常に激しく反対した。マネタリスト(経済活動水準の決定要因として通貨政策を第一とする人々)による反革命と、レーガン およびサッチャーによるその不幸な応用の時代に、トービン氏はこの政治的実験の基礎となる理論に関しての明快で落ち着いた論客だった。彼のお気に入りの標 的はフリードマン氏が擁護する認識論学的な節だった。ここでは、「経済モデルの製作者」は、家庭、産業、その他の経済の担い手は、まるで彼らが非常に複雑 な最適化問題を解決するかのようにシステムの中で行動すると仮定することができると述べられている。トービン氏はいつもこの「数学者主婦」というばかげた 考えに待ったをかけた。この考えは今日も、あやしい擁護者となり不公平を好む復古的政策を保護し失業と貧困を無視している多くの名声ある学界で生き残って いる。 50年代、60年代に確立された彼のモデルの原型では、一つの国が世界の他地域から隔離されて機能していると想定されていた。商業的・金融的な国際的資 本移動が拡大するに伴い、トービン氏は彼の理論に大きく手を入れた。その結果は公共による介入のためのより穏当なルールだった。特に、資本の自由な移動に より政治当局はしばしば産業の収益率のレベルと構造を変えることができなくなっていた。外国為替に開かれた国では収益率は世界レベルで決定されるからだ。 トービン税のアイデアはこの文脈の中で生まれ、確立された。トービン氏はここに二つの根本的な目的を持っていた。一つは外国為替市場を安定化させることで 非合理な資本の逃避の可能性を抑えること、もう一つは各国の経済政治活動に対する自治をある程度のレベルまで取り戻すことだ。一つ目の目的は活動の担い手 が継続的な通貨交換を避けるために投機的な取引を減らすことにより達成される。もう一つの目的は税が(通貨交換を抑えることで)各国間の金融上のクッショ ンのような役割を果たし、それにより政治当局が少なくとも部分的には、国内の取引による収入と国際市場からの収入を分別することができるようになる。税は 政治の息を再び吹き返させ、操作する余地をより大きく確保し、資本の逃避という身に迫る危険は失せるだろう。2、3ヵ月前に彼は彼の提案が理論的に完全に 有効であり実現可能であると再確認したそうだ。 この記事に関するお問い合わせはGranello di Sabbia redazione@attac.orgへ。 ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年3月27日号(通巻121)号 英
国:下院で「トービン税」が提案される
Great Britain:”Tobin Tax” motion at the House of Commons フランス議会がトービン税を採択したのに続き、英国ではハリー・バーンズ下院議員(労働党)がトービン税導入のための法案を提出した。この法案は、6つの 政党・院内グループから支持者を得ている。この法案の提出は、War on Wantのキャンペーンの一環である。 [法案の要旨] 世界貧困の根絶に向けて 国際通貨取引は1日1兆ドル以上だが、そのほとんどが商品とサービスに関する実際の経済と関係がなく、また莫大な投機的流れが、メキシコ(1994)、東 南アジア(1997)、ロシア(1998)、アルゼンチン(2001)に深刻な経済危機をもたらした。 さらに、そのような通貨の流れに対する少額の課税・トービン税によって、投機を抑制すると同時に、年間500億ドル以上の税収が得られ、それを世界の貧困 克服のためのプロジェクトに充てることができる。 このイニチアチブが、議会でトービン税実施を認める法律を通過させたフランスをはじめとして世界各国とその議会から支持を得ていることは素晴らしいこと だ。 首相に対しては、メキシコ・モントレーで開かれる「開発への融資」国連会議に特使を送るよう求める。また、国際的に持続可能な開発のため調整されたトービ ン税導入に一歩を踏み出すよう求める。さらにその収益が、今ある国際援助資金または国際援助を増やすための公約に置き換えられないことを求める。 War on Want については www.waronwant.org を参照してください。 トービン税に関しては: http://tobintaxcall.free.fr を参照してください。 ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年3月13日号(通巻119)号 通
貨取引税の実現可能性について
2月20日に、ドイツ開発省の委託を受けたPaul B. Spahnによる研究報告「通貨取引税の実現可能性について」が刊行された。この研究報告は金融市場の規制をめぐる論議に新たな刺激を与えている。本稿の 執筆時点で、この報告書はドイツ語でしか入手できない。英語版は国連「開発のための金融」会議までに完成する予定である(2406語) Paul B. Spahnによる研究報告「通貨取引税の実現可能性について」への評注 On the feasibility of a Currency Transaction Tax By Peter Waldow and Peter Wahl. WEED(「世界経済・エコロジー・発展協会」) 研究報告「通貨取引税の実現可能性について」の要点 1. 中心的な主張: 通貨取引税(いわゆる「トービン税」)は実現可能である。 1) 通貨取引税は通貨レートの安定のために有効 2) 通貨レートの安定は、とくに発展途上国にとって有益 3) 通貨取引税は技術的には実現可能 4) 1地域だけでも導入可能(EUプラススイスだけでも可能) 5) 発展途上国、移行期の諸国、主要通貨圏に属していない国に対しては、投機防止のための措置と組み合わせるべき 6) 税回避が容易である等の批判は当たらない この報告書の内容は、通貨取引税を提案している人たちに有力な論拠を提供するものである 2. 研究の現況とその政治的背景 Paul Bernd Spahn はフランクフルト大学教授(金融理論)で、90年代初めにIMFの顧問だった。 ドイツ環境省が2002年3月にメキシコで開催される国連「発展のための金融」会議に向けて、この研究を委託した。これは開発省の公式の見解を反映してい るわけではない。開発相の Mrs. Heidemarie Wieczorek-Zeul は公式には通貨取引税への賛意を示していない。 ドイツ政府内での通貨取引税への支持が広がっており、外務次官のLudger VolmerはATTACとWEEDの呼びかけに署名している。フィッシャー外相の緑の党も、この税に賛成している。しかし、財務省ではこの税に対する反 対が強い。この状況の中で開発省は態度表明に慎重になっている。しかし、国連「発展のための金融」会議では通貨取引税が正式の議題に上っており、この会議 は開発省の管轄下にある。 3. Spahnの研究の限界 彼の議論の前提は、通貨取引は有益であり、投機だけが問題だということである。 Spahn の議論は、新しいものではなく、たとえば技術的可能性の問題についてはRodney Schmidtなどの議論にほぼ全面的に依拠している。 また、Spahnは新自由主義的グローバリゼーションに反対する市民社会の運動とは距離を置いていることを繰り返し表明している。 4. 発展途上国への影響 a. 集中的投機の防止 彼の構想の中心は、「2段構えの課税」、あるいは「為替レート安定化税(ERND)」という考え方である。これはすでに90年代に提唱され、「Spahn 税」として知られている。通常は低い税率をかけ、為替レートが激しく変動する時にだけ、より高率のERNDをかける。発展途上国は一方的にERNDを発動 できるようにする。 b. 南北の所得再分配の手段 南の諸国が通貨レート維持のために莫大な出費(これらの諸国が受け取るODA援助の額を大幅に上回っている)をしなくてもよくなる。重要な税収源ともな る。 c. ERNDは資本流入を促す ERNDは通貨の信用を高めることによって、外国資本の流入を促進する。 5. 一地域での導入 Spahn は、通貨取引税をEUとスイスだけで実施しても効果があると論じている。 6. 税率と課税対象 Spahn は税率は 0.01% が適当だと考えている。課税対象には、すべてのスポット取引およびデリバティブ、先物、オプションが含まれる。 7. 金融市場安定化への効果 Spahnによると、ごく低率の税でも、ノイズ取引[実勢を無視した取引]を排除し、金融市場を安定化させるのに役立つ。一方、低率の税は流動性資産の取 引を抑制する要因にはならない。 8. トービン税への誤った先入観への反論 a. 技術的現実性について b. 法律上の問題 Spahn は、ヨーロッパ議会の作業グループの研究に言及し、通貨取引税はマーストリヒト条約やその他の条約と全く矛盾しないと論じている。経済的には、国際的な課 税の方が、従来の各国ごとの通貨政策よりも、市場経済の法則に適っている。 c. 脱税の問題 通貨取引は取引場所が集中しており、脱税の影響は小さい。脱税のために大きなコストがかかる。 ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年3月6日号(通巻118)号 ス
ペイン国会議員のトービン税検討グループ
In Spain a Parliamentarian Group on Tobin Tax By Comision Tasa Tobin y paraisos fiscales(Commission on the Tobin Tax and Tax Havens) ATTACスペイン 2月6日、トービン税の問題とタックスヘイブンの廃止について検討協議するための超党派国会議員グループが正式に結成された。各国会議員は個人の資格で このグループに参加するが、指摘すべきは国会に議席を有する全党派が参加していることである。 唯一、与党の国民党議員の参加が解決すべき問題である。国民党がトービン税タイプの税にはっきりと反対しているために、彼らは準備会議には参加したもの の、正式グループに加わるかどうか明らかにしていない。 この国会議員グループの結成は多くの議員の個人的努力とATTACスペインが協力の賜物である。 ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年2月20日号(通巻116)号 通
貨取引への課税に説得力ある議論が欠如
No convincing arguments against a Currency Transaction Tax By ATTACs in Europe 欧州委員会のリポートである「グローバリゼーションの挑戦に対する回答」は多くの点で興味深く議論のたたき台としての価値はある。同委員会は、国際通貨金 融体制に関して、「伝染性があり自己達成的な増大する危機」という様相を持つ「勃発の頻度も高まり激化する金融危機」を招いた要因としてははじめて「体制 的な問題」の存在を認めた。 同時に過去10年間、ほとんどの途上国が同様の危機の深刻な影響を受けた第一義的要因として、国際金融システム固有の弱さに問題がある点も認めた。同リ ポートは、国際金融システムの改革論議にも広範な焦点を当てている。 しかし弱点、見過し、誤った議論も散見され、最大の問題は通貨取引税(CTT)にほとんどページを割いていないことだ。わずかな量で欧州委員会が同税を取 り上げた五つの論点は以下の通り; (1)CTTの導入は、通貨取引の出来高を減少させ、したがって市場の流動性(換金性)も減り、その結果、為替相場の不安定性を増大させる。 (2)売り買いのオファーのスプレッド(開き)がより大きく保たれるため、裁定取引が減少し、世界各市場で相対する為替相場の統一を妨げる。 (3)CTTの導入は、電子取引の割合を増大させまた参加銀行の間で集中寡占化の傾向をもたらす。 (4)輸出入業者にも課せられるが、輸入業者が背負う負担は、為替リスクの低減効果を相殺してしまう。 (5)高度な為替リスクにかけた超短期の投機利益に依存する投機行為に対して、CTTは有効ではない。 これらの論点については、過去数年間に深く議論され、すでに解決済みであるその反論を対応する五点にまとめると以下の通り; (1) 課税の目的通りCTTは、世界貿易と国際(直接)投資の総額に対して約50倍と言われる為替市場の過剰な流動性を低下させる。貿易や(直接)投資に為替相 場の利ざやを稼ぐ必然性はなく、異常に膨らんだ通貨取引の流動性が不安定の要因であることは明白。そうした投機の減少は国際通貨システムの安定につなが る。 0.1%の課税が通貨取引の83%減少につながるとする実証的根拠のないフランス大蔵省の見通しは過剰であり、貿易と国際投資の支払い手段が枯渇するとの 見方も50倍の圧倒的な取引比重から考えて現実味がない。 「不安定性」とは予測の不確実性や流動性の欠如に起因するものであるから、通貨取引の減少が為替相場の不安定性を増加させるとの指摘も合理性がない。 逆にCTTは、取引量の減少にかかわらず予測の確実性を増やし、流動資金の枯渇は招かず、不安定が増す要因にはなりえないのだ。 (2) 裁定取引は、異なる市場間の為替相場の統一に役立つと一般に言われるが、実際には裁定取引と投機行為の相異を見定めることは非常に困難である。CTTは、 結果として裁定取引を減少させるが、禁止することはない。 買い手の希望するオファー価格と売り手の同価格の格差を広く保つだけだ。こうした状況が生まれた60?70年代には、実体経済に否定的影響を及ぼすことは なくむしろ積極的な要因となった。この議論の背景は、課税により銀行の利益を少なくすることが、金融当局側に動揺を与えているに過ぎない。 (3)いますでに外国為替市場の90%は電子取引によるもので、参加銀行数は確実に減少傾向にある。もし欧州委員会が、銀行の寡占集中化は好ましくないと 判断するのであれば何故、いまに至るまで対抗手段をこうじないのか。それをせずに改めてCTTの導入が、銀行の集中化と「電子取引化」を招くとの議論は焦 点がずれている。 一方、外国為替市場で銀行の集中化と電子取引化に拍車がかかる状況に対して、CTTの導入はその傾向を緩和させる効果がある。 (4) CTTはまず第一に、外国為替市場の銀行間取引の唯一の法人格である銀行に課せられ、同時にその顧客である大企業、生保、ヘッジファンドを筆頭にした投資 ファンにも、部分的に負担されるが、個人は免税である。銀行顧客が同様に投機行為に走る場合、課税が避けられないのは当然であるが、貿易・(直接)投資な どに関しては、生産的業務に支障がないよう課税は最小限に抑えられる。 何よりもCTTの導入により為替相場が安定すること自体、相場の下限リスクに対するヘッジ(保険)のコストが低減することを意味し、その効果は課税による 最小限のコストを相殺して余りある。ヘッジ・コストの減少は(同時に税収の受益者ともなる)途上国にとってとりわけ重要である。 (5.)為替相場の変動が投機の影響をこうむり、想定された予測限界値を突破した場合は、平常のマーケットに課せられる0.1%という課税率も同時に急速 かつ法外なまで切上げられ、サーキット・ブレーカーの(電源を落とす)役割を果たす二段階方式が、当初の同税提唱者のデザインであり、ジェームズ・トービ ン氏の考えをはるかに超える内容は強力な投機攻撃とたたかう有効性を示すものだ。 ヨーロッパにおいてCTT導入に関して問われているのはもはや技術的問題ではなく、政治的決断の問題である。 ●「サンドインザホイール」(週刊) 2002年1月23日号(通巻114)号 モ
ンテレーへの道
「国連・発展のための金融に関する国際会議」(3月メキシコ・モンテレー)に向けたオンライン討論の呼びかけ The Road to Monterrey このフォーラムの目的は、発展のための資金を拡充させることと、「2015年までの貧困削減の目標」が西側政府によるもう1つの空約束に終わってしまわな いようにすることである。インターネットを利用でき、この問題に関心を持つすべての人たちに、このオンライン討論への参加を呼びかける(438語)。 「ワンワールド」(http://www.oneworld.net/)は,「ユーロダッド」(http://www.eurodad.org/)との共 同で、3月末にメキシコ・モンテレーで開催される「国連・発展のための金融に関する国際会議」に向けて、国際的な政策決定者たちを具体的な行動へ動かすた めに、オンラインの討論を開始した。 このフォーラムは1月21日から3月29日まで開かれ、http://forum.oneworld.net:8080/~debtchannelでアク セスできる. 「ユーロダッド」でこのフォーラムの準備にあたっているジョナサン・ウォルシーさんは次のように述べている。「このフォーラムの目的は、発展のための資金 を拡充させることと、”2015年までの貧困削減の目標"が西側政府によるもう1つの空約束に終わってしまわないようにすることである。インターネットを 利用でき、この問題に関心を持つすべての人たちに、このオンライン討論への参加を呼びかける」。 この国際会議は、国際的な金融の枠組みの改革と、国際経済に関する決定への途上国の参加の拡大の要求が強まっていることを背景に開かれる。オンライン・ フォーラムでは、債務の免除、ODA、投資に対する管理、発展のための資金の確保などのテーマを取り上げる。 国連のアナン事務総長は、昨年5月の「開発のための金融アジェンダ」に関連して、「もっと大規模な投資-公的投資と民間の投資の両方-を集めることに成功 しないかぎり、貧困の一層と発展の促進という我々の目的は果たせない」と語っている。 ●「サンドインザホイール」(週刊) 2001年12月26日号(通巻110)号 トー
ビン税をヨーロッパだけで導入することは可能か?
Is it possible to implement the Tobin tax in Europe alone? By Prof. Dr. Jörg Huffschmid とりわけ世界最大の金融センターである米国がトービン税を導入しない限り、ヨーロッパが単独で課税することは不可能であるという主張は有効であろうか。こ の主張の当否を明らかにするためには、以下の三つの質問に答えなくてはならない。 1. トービン税は、一国あるいは特定域内の数カ国のみで導入が可能か? 2. ヨーロッパのみでトービン税が導入された場合、国際通貨投機を抑制するのにどれ程の効果があるか? 3.トービン税のヨーロッパでの単独導入は、ヨーロッパ企業を世界の他企業から差別することになるか? 1.トービン税は、一国あるいは特定域内の数カ国のみで導入が可能か? この質問に対しては、2000年4月の段階でドイツの外国為替取引高65%、イギリスの同28%を占めたユーロのケースを例考えたい。(数字は国際決済銀 行年報71?99ページより)外国為替取引のすべてを個別に登録することは可能で、二つの方法があり得る。第一に今日、間に仲買業者(ブローカー)を入れ る場合も含む銀行間取引を決済するインターバンク市場においては電子決済が普通である。したがってすべての取引に対して、徴収当局に記録を電送することは 技術上きわめて簡単だ。第二に実際の支払い過程は、今日の銀行間市場でセキュリティ上の問題から個別に行われる場合が増加している。 課税可能な四つの異なるケース: a米国でユーロを売りドルを買う。典型的な国際取引で、内訳としては輸入取引や海外投資が減り、利ざや稼ぎや投機のための証券投資が増えている。課税に問 題はない。 b フランクフルトで、ユーロを売りドルを買う。ドルはフランクフルトの口座にあり、国際取引が発生しない場合。取引は購入者の帳簿に記録され付加価値税また 消費税として課税できる。 c 実際の為替取引きを伴わないユーロの米国のユーロ口座への送金。送金されたユーロは、外国為替投機を目的とするものだが、トービン税の課税対象となるかよ く議論されるケースだ。外国通貨として価値尺度が異なり、貯蓄目的ともなり得ないユーロを外国に送金するのは、脱税あるいは金融投機が最も広範な目的と見 られる。したがって米国へ送金されるいかなるユーロに対してもトービン税が課税されるのは当然である dすでに米国で流通しているユーロは通貨投機を目的にしている。投機家は、短期で流動化できるユーロを大口保有する必要があるが、ヨーロッパでトービン税 が実施されれば、そうした投機行為は難しくなるだろう。 結論:もしトービン税が世界の金融市場すべてで実施されずヨーロッパの単独導入となった場合は、通貨取引に直接適用されるのでなく、購入税すなわち消費税 として徴税される。技術的に問題はなく、通貨取引に対する直接課税と同じ効果をもたらす。したがってヨーロッパ単独でトービン税の実施も可能である。(こ の税金は、地域限定の性格は持たず、したがって他の国・地域においてもいずれそれぞれの通貨に対して類似した適用が可能だ) 2. ヨーロッパのみでトービン税が導入された場合、国際通貨投機を抑制するのにどれ程の効果があるか? 実際には、主要な危機を招き得る投機に対しても効果を持つ。それがヨーロッパに限定されたトービン税であっても、効力を持ちえるものだ。ユーロは取引高で 世界第二位の通貨となりつつあり、ユーロ取引による国際通貨投機への影響はもはや無視できない存在となっている。国際決済銀行(BIS)の第69回年次報 告は、「欧州通貨同盟(EMU)の発足時にユーロは全体の為替取引きの50%を占め、その後も拡大が見込まれる」と指摘した。さらにEMU発足以来、ド ル・ユーロの為替相場が一層に不安低化したことに対して、トービン税の実施による為替相場の安定化は特別に注目されよう。さらにトービン税の実施は、東南 アジアや中南米においても、自国通貨に対する投機抑制のための課税に道を開くことになるかも知れない。 3.トービン税のヨーロッパでの単独導入は、ヨーロッパ企業を世界の他企業から差別することになるか? トービン税の実施は、実際に短期の為替投機抑制を目的に通貨取引を割高にすると同時に、為替相場の変動リスクを小さくする。しかし一方でトービン税を支 払っていない米国企業が相場安定の恩恵に「タダ乗り」するのは、課税されるヨーロッパ企業を相対的に不利益な状況に招く。ただし金融投機に限定する限り、 そうした状況に反対すべきでない。もしすべての投機主を抑えることが不可能であれば、とりあえず、適用可能範囲内の投機から規制を実施してゆくべきであ る。 最後に:ヨーロッパでトービン税を導入することは、国際為替市場からの孤立を意味するものではあり得ない。課税が実施された後も、ユーロがニューヨーク、 東京、ロンドン、フランクフルトで他通貨に対して取引されることに変わりはない。いずれヨーロッパ以外の国でも、トービン税が導入されれば投機抑制の弾み となることは言うまでもない。 [特別付録1] 2001年11月20日 ニュースレターの前号で報告されているように、フランスの国会でトービン税が可決されました。以下はATTACフランスの11月20日付のコミュニケで す。フランス版ニュースレターの285号からの全訳です。 トービン税の可決 11月19日(月)、国民議会第一読会は2002年度予算修正案において、為替市場への課税の原則、いわゆるトービン税を採択した。最高0.1%まで引 き上げ可能なこの課徴金はしかしながら、EUの他の諸国が全く同一の措置を採った場合にのみ実施される。この条項が厳格にこの法の射程を規制するとすれ ば、(一見その実施を遅らせるように見えながら:訳注)この措置は、ヨーロッパにおいてトービン税のゾーンを築こうと闘っているアタックの立場と一致する だろう。 国会での三年にわたる道のりは大変なものだった。1999年と2000年には、アタックの選出メンバーと協調する議員たちによって上程された「トービン 税修正案」は、政府によって拒絶され、多数派議員たちによって破棄された。さらに今年、まったく同じ様な状況ではあったのだが、リオネル・ジョスパンは、 この数ヶ月のらりくらりとした態度をとり続けていたこの税の原則に対して反対しなければならないとは考えていなかった。経済・金融相のロラン・ファビウス は、最後の最後までその敵意を隠さなかったのだが。ぎりぎりになってから政府を予備調査の発議へと押し出し、ヨーロッパにおける投機的フローへの課税を欧 州議会で実現させるよう導いたのは、ひとえに自由主義的グローバリゼーションへの反対の運動、アタックの運動への世論の支持である。この発議は、昨年9月 にリエージュでベルギー主催のもと開かれた、経済と金融に関するEUの閣議(Ecofin)で採択された。 アタックはしたがって、政治的、象徴的な前進をつくりだし、ヨーロッパの諸他の議会のための先例として働き、私たちがトービン税の現実の適用のために繰 り広げるだろうキャンペーンの支点としても役立て得るこの決定を喜ぶ。この法案に投票した国会議員たち、とりわけ金融委員会の議員たちは、Ecofinが 委託した予備調査の実際の行使について、欧州議会に対する最大限の警戒を示すよう政府に要求しなければならない。ブリュッセルの委員たちの何人かは、実際 すでにトービン税にたいする反対を公然と表明している。すなわち、入札条件明細書もできあがらないうちに予備調査が終わるなんてことはあってはならないだ ろう!と。 9月13日にアタックの主張に耳を傾けつつ、ロラン・ファビウスはさらに、この予備調査の透明性と、あらゆる傾向からなる専門家たちの意見を考慮するこ とに注意を怠らないよう約束した。9月19日に、アタック、下院の協力議員たち、アタックの上院の議員メンバーたち、様々な国内外の専門家たちによって国 民議会で組織された会議の際、トービン税の技術的な実現は乗り越え不能ないかなる問題も示してはいないこと、重要なのは政治的意志であることが指摘され た。ヨーロッパの他のアタックと連携して、アタック・フランスはこれらの専門家たちの意見が聞き入れられることを委員会に公式に要求していくだろう。 ポルト アレグレでの世界社会フォーラム(FSM、2002年1月31日?2月5日)においては、アタックは諸外国のパートナー、とりわけアメリカやカナダの人々 とともに、トービン税の運営方法やその割り当てについてのセミナーを開催するだろう。トービン税は、世界社会フォーラムの一環として行われる世界議員 フォーラムの議事日程にも確定的にのぼっている。これはとくに、2002年5月にモンテレー(メキシコ)で予定されている開発資金についての国連の会議を 念頭においている。 国民議会での可決は、たとえそれが本質的には象徴的性格のものであるとはいっても、ヨーロッパの、そして国際的な戦いの増援部隊を形成するものではある のだ。 すべての資料、修正案の条文、会議報告書は http://www.attac.org/fra/asso/doc/doc78.htm で。 |