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トービン税
トービン 税提案を推進するために
 

トービン税提案を推進するために

2004年2月4日開催のトービン税ネットワーク(TTN)会合での短いプレゼンテーション

ソニー・カプーア
 
ソニー・カプーアはTTNの政策顧問を務める。以前デリバティブのトレーダーをしていたことから、トービン税提案を進展させ、TTNの議論をさらに堅固な ものにする点で、直接的な経験が役立っている。
 
◆トービン税提案を推進
 この通貨取引税の提案は、税率について、単に取引高が莫大だというのでなく、市場の利益性を考慮に入れなければならないという点において、2段階トービ ン税として歴史的に考えられてきたものを越えた動きである。これは考えられる現実の税収に衝撃となるし、良く引き合いに出される500億ドルの税収に対し 確かに影響を与える。分析によれば、世界の外国為替市場の全利益は200億ドルから300億ドルである。したがって、最高100億ドルから150億ドルの 収益が通貨取引への課税から生じるものと見られる。
 
 持続可能な国際的開発を支える税収をあげるには、基礎税率は0.005%、すなわち基礎点の半分見当(基礎点は1%の100分の1)となろう。この低い 税率で市場がかなり縮小される、あるいは通常の外国為替市場の行動に変化が起きるとは予想していない。
 
 しかし、通貨価値に激しい変化がある場合、これは大体において投機的な攻撃の結果であるが、税の第2段階――大体20%――が実施されることになろう。 この罰則的税率は取引自動停止装置として作用し、強制的な切り下げを防いで、より安定した通貨環境を生み出すべく働く。
 
◆これは主流の概念である
 トービン税の基礎税率は、考え方として財政システムの主流の一部をなす証券取引税と同じである。証券取引税は主要先進10ヵ国の内、6ヵ国で徴収されて いる。二つ例をあげると、英国では0.5%の印紙税が、また米国ではすべての株取引に0.003%の税が課税されている。それにより、英国では毎年、大蔵 省に20億ポンドの税収があり、また米国では、毎年20億ドルが連邦準備銀行に入る。ベルギーやイタリア、それにスイスなどでもさまざまな形の証券取引税 を適用している。
 
 第2段階(回路のブレーカー)概念は、考え方としては1987年の暗黒の月曜日、ニューヨーク株式市場大暴落の後にニューヨーク証券取引所(資本主義制 度の聖地)が導入した取引自動停止装置と同じである。これにより株式市場の脆弱性が抑えられたので、世界の他の多くの証券取引所にこの機能が導入されるこ とになった。
 
 また、国家をこえて課税するという考えも例外的なものではない。このような税はヨーロッパ付加価値税の形で存在している。
 
◆誰が利益を得るのか
 信ずるところでは、このような税は関係する全ての当事者に例外なく積極的な影響を与える。これはパイの大きさ(世界経済)を広げることで達成されるもの である。通貨価値の不安定性は成長と貿易への税として作用する。だから、通貨価値の不安定性を抑制することで、成長と貿易への主な障碍を取り除くことにな る。

 (1)世界経済
  • 通貨価値の変動が少なくなるので、投資効率が上昇し、それが今度は世界の生産性を上げることになるだろう。
  • 通貨価値の変動は国際貿易にとってマイナスである。最近のハーバード大学の報告では、主要な3通貨(ユーロ、円、ドル)の変動率 が1%縮小すると、開発途上国の貿易が2%増大するという。
 (2)開発途上国
  • 最貧国はこの税から生じる税収によって援助金流入が増加し、利益を得ることになろう。
  • トービン税は東南アジア危機の引き金となったホットマネー(短期資金)の流入を抑えて、さらに安定した資本流入(例えば、対外直 接投資)を促すことになろう。
  • このような税により、通貨暴落(東南アジアの通貨危機に見られるような)と関連する巨大な社会的コストが回避できる、あるいは少 なくとも緩和される。
  • 開発途上国における通貨価値変動が減少すれば、開発途上国との取引コストが下がり、それにより投資や成長が押し上げられることに なる。
  • 開発途上国はかなりの金額を外国為替準備金に投資している。インドを例に取ろう。インドは1000億ドルをこえる金額を主に米国 財務省証券に投資し、毎年1〜2%の収益を得ている。この資金は代わりに、インド経済自体により生産的に投資可能なものである。実際、インド経済は約7% の成長率となっている。だから、事実上、インドは米国経済を助成しているのであり、米国の利率を人為的に低く抑えることで消費者や軍の支出を支えているで ある。これはまた、インド内の利率が割高であること、それにより成長へのブレーキとなっていることも意味する。ここで但し書きが必要だろう。通貨価値の変 動が準備金を保有する大きな理由であるが、それが唯一の理由ではない。しかし、このような高水準の準備金保有では、機会費用の問題が重要である。準備金の わずかな縮小でも利益を生み出していただろう。
  • トービン税はまた、開発途上国が、公共支出を適当な額に決定することなど、政策的な独立性を高める一助ともなろう。
 (3)企業活動
  • 外国為替のヘッジ(つなぎ売買)コスト、これは多国籍企業にとって大きなコストであるが、これが大きく下がることになろう。
  • 国際貿易が増えると、さらにビジネスの機会が創出される。
  • 低利率環境が企業活動や投資を刺激する。
  • 低めの為替変動率により、国境をこえる投資やビジネスのリスクが減少する。
  • 国際金融システムへの衝撃が減ることになれば、企業は長期的な展望にたった計画が可能になり、より効果的なビジネスや投資の決定 を行うことができる。
  • この税を支持することで企業はその社会的責任への信用度を高めることができる。
 
◆しかしトービン税は実現可能なのか――一般に見られる懸念を取り上げ る
 市場の主導的な当事者である銀行がこのトービン税への大きな批判として表明しているひとつの懸念は、この税が流動性――買い手が通貨市場で売り手を見つ ける能力――に悪影響を与える点にある。しかし、いくつかの銀行では、おおっぴらにではないが、市場が現在のような巨大規模で過剰に流動的だとしても、 0.5%の基礎点税率は、その流動性に大きな衝撃を与えるほど高いものではない、とみられている。
 このような課税は世界的に実施する必要があるという議論に対しては、単独の課税が可能であることを指摘する必要がある(この点はトービン税ネットワーク が作成する文書で敷衍されるだろう)。単独の税が実現可能かどうかは、1980年代にチリが課税したURR(強制準備預金制度)で十分に証明されている。 これは1990年代後半にマレーシアも実施しており、より最近では、ブラジルやトルコで行われている通貨課税の存在からも立証されている。
 
 トービン税は多通貨同時決済(CLS)銀行での決済時点で徴収できる。
 
 デリバティブはスポット市場での取引決済時点で容易に捕捉できる。
 
 事前の計算では、脱税や課税回避のコストは、納める必要のある税の額よりかなり高くつく。

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